中国派遣日本語教師 | |
高度を次第に下げていく飛行機の窓からは、黄褐色の小高い丘の連なりが見えた。丘の斜面には皺のような谷筋が刻まれているが、水は流れていない。砂と土と岩が織りなす乾燥地帯。中国内陸部の典型的な風景だろう。
街は東西に分かれている。東半分が古くから開けた老街、西半分は広い道路が碁盤目状に走る新市街である。私の勤務する北方民族大は、もう一つの大学である寧夏大とともに新市街の西はずれに近いところにキャンパスがある。
この大学の大きな特色は、学生の出身地が中国全土にわたっていることだ。南の海南省、雲南省から北は黒竜江省まで、さまざまな省から集まって来ている。民族分布も多彩だ。多数を占める漢族のほか、回族はもちろん、満族、壮族、苗族、土家族といった少数民族出身の学生がいて、なるほど中国は多民族国家であることを再認識させられる。キャンパス内を歩いていると、まるで中東にいるかのような彫りの深い顔立ちを見かけることもしばしばだ。
学生に日本食らしき晩飯を振る舞う約束をした日のこと。スーパーへの買い物に回族の学生が同行してくれた。その学生はもちろん豚肉はダメ。煮込みハンバーグをメニューにしていたのだが、自宅でやるように牛豚の合挽肉は使えない。幸い牛肉のミンチが清真肉売り場にあったので、それを約1キロ買って帰り、100%ビーフのハンバーグを作った。他に作ったのは、ちらし寿司と厚焼き卵と野菜炒め。やってきた5人に指示して手伝わせ、出来上がった料理をテーブルに並べてから、「いただきます」を唱えさせて戦闘開始。大人の握りこぶし大のハンバーグを人数分作ったのだが、それが真っ先になくなり、桶に盛ったちらし寿司もすべて胃袋に収まった。
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目黒精一(めぐろ せいいち)さんのご経歴を紹介します。
元新聞記者。『中国の若い世代に日本語と日本の歴史・文化、さらに人気のサブカルチャーや政治経済の動向など「日本のいま」を伝えたい!日中の互恵関係の発展に幾分かでも寄与したい!』との思いで、センター中国派遣プログラムに応募。2011年度研修会(センター主催)を修了後、福建師範大学へ3年間赴任。
新聞記者生活を通じて身に付けた“正確で分かりやすい日本語で表現する力”と“インタビューした相手の方々に明快な日本語で意図を伝えるための会話力”を活かし、現在、北方民族大学(寧夏自治区)で活躍中。。 |
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