石家庄学院 竹川詩子
北京から高鉄で、一時間余り、河北省の省都である石家庄で働き始めて間もなく、日系企業に集まったのは、企業の担当者と、各大学・高校の日本語教師8名である。8年間継続している日本語スピーチコンテストを開催するかどうかから話し合いがもたれた。ここ石家庄は、人口1千万人を擁する都市でありながら、日本人も少なく、日本語学科を選択して学ぶ学生が多いにもかかわらず、発表の場所や機会に恵まれていない。唯一河北省スピーチコンテストは、学校一名の参加のみ認められている。
そこで、日系の企業が協賛となり、機会を提供しようという試みで始まったものであるらしい。市内の5校の大学と1校の中等学校(日本の高校にあたる)の20数名が参加し、スピーチを競い合うものであった。特徴としては、運営を各学校の学生ボランティア15名に任されているというところである。といっても毎年初のメンバーなので、日本のように会議や話し合いを多く経験していない学生たちにとって、企画運営は至難の業である。私たちにとっては、会場設定、予算計画、商品選び、時間設定、など前もって動くことを日常的に行っているため、簡単に思えることも、経験のない学生が、メンバーに意思を伝え理解させ、企画を予算案とともに提出するのは並大抵のことではないらしい。もちろん私たちもサポートに回るのだが、微妙な意思確認が難しく、スピーチの指導より、運営の方で、ドキドキしながら当日を迎えた。
「心に残った言葉」「残しておきたい中国の伝統」の二つが課題として提示され、今年は23名の参加者で、開始された。1人3分間の持ち時間でスピーチを行い、1分間の質疑応答に答える形である。中国の学生の「今」が、見えた気がする。「こころ」を触れ合わせるひと言に感動する気持ちを持ちつづけたい、親の気持ちが分かるひと言にうれしさを感じた、伝統的な習慣や行事を残すためには自分たちに何ができるのだろうか、漢服に込められた先人の教え、方言があることで多様な劇の存在がある、など内容的にも聞きごたえのあるコンテストになっていた。
三味線のアトラクションから始まり、司会進行も学生ボランティア、ビデオや、カメラ撮影も学生が当たったこのイベントであるが、日程の急な変更にもかかわらず、大盛況に終わることができた。外務省の参事官にも来ていただき、日中の青年交流の節目の年に、日本を理解してくれる若者がいることをうれしく感じたと話してくださった。
結果、わが校は、二年生ながら二位と三位に入賞し、うれしかったのではあるが、何より、委員長はじめボランテイアの40名近くが進んで交流を深め、話し合いを行い、満足感を得ていたことに成長を感じさせられ、この活動の意義がここにある、と学べた私自身であった。卒業後の仕事にもきっと生かせることであろうし、市内の学校間の交流もますます盛んになっていくに違いないと、感じている。学生たちの成長を追えた、スピーチコンテストであった。
今年度参加校 |
司会が緊張しながらもドレス姿で頑張っています
実行委員長挨拶 裏方力仕事が多く衣装に気が回らなかった?(ちなみに出場者は正装でした)
審査員とミーティング中
終わってほっとした実行委員たち!!
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