魯東大学 藤本 眞悟
2016年8月27日(土)16時40分関空を離陸し、はじめて中国の大地を踏みしめることになった。赴任先は山東省烟台市である。
日本とは歴史的にも深い関わりのある都市だ。山東半島東部に位置する港湾都市で、四季があり、ほぼ日本と同じだが、冬は関西より寒い。空気は綺麗で、北京のようにマスクをしている人はいない。
さて私の赴任した魯東大学は少し郊外に位置しているが、町の中心部にはバス・タクシーで20~30分以内で行ける。中心部はかなりの都会で、イオン、ユニクロ、無印良品などがあり、新華書店という大きな書店もある。このような恵まれた環境の中で学生はいじらしいほど勤勉である。全寮制の国立大なので、欠席はしないし、宿題の提出も全員出すなどの完璧さである。すれていなくて、純朴な学生が多い。所謂純粋真っ直ぐだ。
今、着任当初の事を振り返ると、「何じゃ!こりゃ!」と思うようなことが多々あったが、なつかしささえ覚える昨今だ。
実際忘れもしない11月3日(木)夜7時からの2年会話の授業中、突然部屋中の明かりが消えた。何人かが明かり(携帯)をつけ、歌は歌えそうだったので、1時間ほど、みんなで歌ったり、こちらも自慢のノドを披露したりしたが、電気が復旧しなかったので仕方なく解散した(でも歌って楽しく過ごせた)。
授業も徐々に楽しくできつつあり、教室に入るのが楽しみでもある。現在の担当教科は、2年の作文・会話、3年の古典文法・応用作文・上級会話で週7コマである(1コマ100分)。
古典文法以外は、すべて自分でテキストを決め、自由に授業内容(教案)を作成し、完全に任されている。作文は添削が大変だが、下書き・清書・浄書までやり力を入れている。会話は授業のテーマに沿いつつ、自由な発想や場面設定しロールプレイまでやりとげさせている(これは面白い)。
学生にとっては可能な限り日本語に接する時間を確保する必要があると思われる。その意味でも日本語教師の役割は大事である。視聴覚機器やスマホからでなく生身の日本人から発せられる日本語から受ける印象は強烈であると思う。
ゆえに日本語教師は、自らを高める努力は欠かせない。私事ではあるが、私自身修士・博士論文を四苦八苦して仕上げたこと、演劇部顧問の経験、大阪のシナリオセンターに通っていたこと等がとても役に立ち、今に繋がったなと実感している。このような経験を踏まえ、大学院進学希望者が色々質問してきた場合も丁寧に、答えてあげている。
最後に次のような言葉で締めくくりたい。「荷が重いのではない、自分の力が足りないのだ」と自覚し、日本語教師としての力量を高めるため日々精進努力する。
また「この世のもっとも純粋な喜びは、他人の喜びをみることだ」との思いで、学生が日本語学習する喜びを見いだせたら、素晴らしい。
魯東大学の美しい夜景
日本語・音声スタイルコンテストの審査員をつとめる
2年生と煙台山に登山
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