吉林省 白城師範学院 足立 泰之
57歳まで勤めた電機メーカーで、世話焼きで陽気な韓国人、几帳面でまじめすぎるドイツ人、人の要望に応えようと努力するアイルランド人、そして人の気持ちに寄り添うようなギリシャ人たちと一緒に仕事をする機会がありました。
それぞれの国により、何か共通する印象がありました。
そして、今、中国の学生約80名(1年・2年・3年の3クラス)と一緒にすごしています。
この中国の人達に適する、上記のような一言で表す枕詞は全く見当たりませんでした。
全員が全く違う個性を持ち、共通する個性がない国民のような気がしていました。
学生たちは朝9時から夕方17時半まで授業です。
そして、ここ吉林省白城は省都長春まで1日4本の汽車で5時間半、半径300kmに他大学なし(よって学園祭はないし、クラブ活動で他大学との試合もなし)、バイト先もほとんどなく、遊び場はゲームセンターと3軒の映画館ぐらいしかありません。
しかも、他大学に派遣された日中技能者交流センターの同期のメールを見ていると、明らかにこの大学の日本語レベルは低いのです。
どうやって、楽しくそしていろいろな疑似体験を通して、日本語を教えていけばよいのか考えていたある日、スーパーでかかっている音楽がAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」であり、負けないこと、投げ出さないことの「それが大事」だと気づいたのです。
そしてもうひとつ、同期の講師が教えてくれた映画のサイトから、青春ものの映画をダウンロードし、セリフと歌詞を日本語で書きだし、3人一組で全員が1分程度のセリフをまねる練習をしました。
もちろん、通常の教科書を使用する授業も行いましたが、私が配った歌詞を一番上において、早く「それが大事」を歌おう、次の映画は小栗旬主演にしてください、なんて授業になってしまいました。
12月最後の授業の日、2年生には「来年来るときは1週間、上(カミ)さんも一緒に来ます。」と挨拶したら「わー!」と大喜び。
理由は日本人の上(カミ)さんが作るおいしい料理を食べられると考えたのです。
1年生には、「私の中国語のレベルが低すぎて、わかりにくい授業だったかもしれません、私も来年はもう少し中国語を勉強して、わかりやすく教えていきたいです。」とつたない中国語で伝えると、みんなが拍手しています。
3年生には、「君たちのおかげで、なんとか生活でき、4カ月間過ごすことができました、ありがとうございました。」と日本語で伝えると、「こちらこそ、ありがとうございました。」と言いながら、全員が頭を下げていました。
えっ、こんな共通の反応が返って来るとは、思ってもみませんでした。
学生の熱意、興味、好奇心にささえられて授業を継続できました。
2月末、上(カミ)さんと一緒にまた、白城に行きます。
寒さに驚きを感じたマイナス20度の12月から一転、日に日に暖かくなる白城に期待しながら、そして、学生たちとの日々を楽しみにしながら、授業の準備を始めている今日この頃です。
けっこう真面目に働く、雪かきをする学生
夢追い人の合唱 2年生
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