柴野 たまの 講師
日本語レベルはもとより、担当レベルも異なる先生方の研修会、事前のアンケートをもとに【音声・表現・語彙・漢字・文脈化と個人化・クラス活動】の項目をたてた。各単元の始めにグループ分けゲーム、グループでの討論・発表の形で進めた。
【音声】は研修要望の第一位。中国語話者にとってリズムは「音節」が基本だが、日本語は「拍」。日本語のリズム感(拍感覚)を養うことを中心に議論、数字のリズム遊びや2拍4拍子の「北国の春」のフォークダンスも紹介した。
【日本語の表現】言葉はそれを生み出した文化であり、日本人に共通の思考様式もある。
『はっきり物言わぬ日本人』ではなく、「言わぬが花」「沈黙は金」と寡黙の美を讃えた諺もある。日本人は文脈に多くをゆだね、そこから察しがつくことはできるだけ省き、表現をすっきりさせたいのだ。日本語に多い省略・否定形式・推量や待遇の表現を文法、表現意図の両面から検討。少ない言葉で深い内容を伝える「俳句」にも触れた。「なにもございませんが〜」と食事を勧める表現が中国にもあるというのは初耳だった。
【語彙】日本固有の和語・中国からの漢語・西欧語系の外来語・和製英語など多岐にわたる日本語語彙、似ている言葉をどう使い分けているか、違いをどう教えるかを討論。
【漢字】漢字抜きでの日本語はあり得ない。漢字圏学習者にとって、「同じ漢字だから易しいだろう」と思うのは大きな間違いである。同じ漢字だからこそ、母語の漢字の知識が邪魔をしての誤りもある。中国語と比較しながら、漢字を通して日本語のジェンダーを意識。
【文脈化と個人化】今回の研修で一番伝えたかったこと。練習問題で文脈とは何かを考えてもらった。一つだけ情報を交換という条件で自己紹介ゲームをしたとき、日本語堪能な先生方ということもあって、しゃべる・しゃべる、ストップかけてもしゃべる。
自分のことには一生懸命になれる。これが個人化がよいということ。「さあ、教科書から離れて、自分を語ろう!」、個人化活動について話し合った。
(「教える側として感じたこと」)
時間は少ない。先生方は一生懸命、自分のスキルアップに、学生のために。私も一生懸命、応えるために気は抜かない。先生方は、グループ討論・アクティビティを取り入れた活動型授業を今後に活かすという。こちらこそ、改善点がたくさんある。教えることは学ぶことと再認識した。
よい「トキ」を共有した同志に乾杯!「一生懸命に勝るものはない」。
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