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日本語教師体験記

中国での2年半の勤務を振り返って(2014/6/30)

広州珠江職業技術学院 吉田豊

 私は、日本語教師として、広東省の省都である広州市の増城区にある、広州珠江職業技術学院(通称、珠江学院)に勤務して、既に2年半以上が過ぎました。増城区は、広州市の東部に位置する、人口100万人余りの区です。気候は温和で、レイシの郷として有名です。香港、深圳にも割に近い位置にあります。広州市の中心部へは日帰りで行け、買い物や観光ができます。
 この珠江学院に、入学試験、定期試験がなく、半期4か月余りを1学期とし、初級、中級、高級の3段階に亘る1年半のスパンの、専門学校的な性格を有する学校が所属しています。そこの学生たちは、日本語能力試験N1、N2の合格を目指し、日本語の勉強に大変熱心に取り組んでいます。彼らの多くは、卒業後に、広東省内にある日系企業で働きたいと考えています。N2の資格を取得した中級クラス終了の段階で卒業する学生もいます。私は、このような学校で学ぶ高級クラスの学生たちに日本語を教えてきました。以下、概略ながら振り返ってみました。

1 赴任したころ
 期待と不安が入り混じった心境で、2011年8月19日に着任しました。赴任当時は分からないことばかりでしたから、毎日中国人の日本語教師に尋ねていろいろ教えてもらいました。その先生たちの親切なアドバイスのおかげで、指導上、生活上困ることは少なくなり、安心して過ごすことができるようになりました。会話学習の授業を担当することは、赴任以前にメールで予め知らせていただいていましたが、指導のための教科書はないとのことでした。だから、どんな題材や活動が会話能力を伸ばすのに適切なのかを考え、良かれと思うプリントを作成し、授業をするだけで精一杯でした。まさに、手探りの自転車操業的な毎日でした。

2 4か月余りの前期が過ぎて
 前述のようにして、前期を乗り切りました。それだけに、この期間を経るころには、反省すべき点がたくさん出てきました。これで学生たちの会話能力を伸ばすのに役立ったのだろうかと自問しながら、改善点を探っていきました。これまでパソコンに蓄積してきた数々のプリントの内容を検証し、今後もそのまま継続して使用していくものと、今後は使用するにしても改善すべき個所を多かれ少なかれ含むものと、今後は使用するのをやめるものとに分けていきました。その上で、後期の指導に当たっていきました。
 学生たちが日本に関して持つ興味深い事柄を取り上げ、自由に質疑応答するフリートーキングの機会は、前期に引き続いて週3時間設けました。関心の高い学生が1割ほど出席してくれました。

3 一年が過ぎて
 一年が経過したころ、それまでの指導への反省が一層高まり、改善のためのアイデアがたくさん浮かんできましたので、それらの有効的な活用を考えどんどん導入していきました。一年間の指導経験から、今後の指導方法と内容がだんだん煮詰まってきたように思います。前期と後期の2回、会話学習の指導を経験したので、目的に見合う指導内容がしっかり把握できるようになってきたと言えます。
全体像が見えてきたせいで、1学期分の全体の指導計画を立てる余裕が生まれてきました。だから、エクセルのソフトを利用して、会話学習の際の活動の項目の一覧表を作成することにしました。会話能力の向上という目的を意識して、取り組む活動の項目の整理と細分化、序列化、指導優先順位を考慮したものを作成しました。この一覧表によって、指導範囲、指導段階全体を見通すことができるようなりました。
 フリートーキングは、一年目同様、希望者を対象に続けていきました。また、中国人教師の先生たちとは、それまで以上に一層親しく付き合うことができるようになりました。

4 2年目が過ぎて
 このころの中国での生活は、頗る安定したものになっていました。大都市広州市に組み込まれた区とはいえ、それほど大きな市街地を有していないので、自然と当地の地理に詳しくなりました。移動手段は自転車ですので、細かな路地も通ることができ、生活に必要なものがどこで手に入れられるのか、詳しく把握できてきました。
 指導に関しては、1年目を過ぎたころから、学校側からある一定以上の評価をいただいていましたから、更に改善した計画と指導の下、心身ともに充実し安心した生活を送ることができました。

5 4か月余りを残して
 今も安定した状態で仕事と私生活を両立させて過ごすことができています。今までの集大成となる学期だということを念頭におき、最後まで精一杯、会話学習の指導に努めていきたいと思っています。

6 学生たちとの楽しい交流と絆の深まり
 学生たちはみな、親切で、友好的な態度で接してくれます。この学生たちとの交流が深まるにつれて、行動を共にすることがよくあります。日ごろは、毎日のように、学生たちと昼食や夕食を楽しく取っています。また、買いものに同行してくれたり、学校のすぐそばを流れる川の周囲にあるサイクリングロードを自転車で走破したり、時には、北部にある1000メートルほどの山に一緒に登ったりしています。改まった会食にもときどき招かれます。
 逆に、学生たちを教師寮に招いて、寿司や焼きそば、お好み焼き、カレーライスなど日本食を饗し、楽しく談笑して過ごすこともあります。
 特別のこととしては、日帰りの広州中心部への旅行や数泊を要する旅行にも同行してくれたことが3回ほどありました。おかげで、安全で思い出の多い楽しい旅行ができました。
 このようにして、学生たちとは深い心のつながりができたので、彼らが卒業してからも、メールを交換し合ったり、電話で近況を伝え合ったり、広州や東莞、深圳で就職した学生たちを訪問したりしています。

7 生活上の困りごとへの対応
 風通しの悪い住環境のため、カビが発生しやすく、その対策に頭を悩ませたこともあります。また、インターネットの接続がすんなりとはいかず、数日間は使えなかったことも時々ありました。施設、設備の質が十分ではないため、いろいろなものが故障したこと、停電が毎年数回ほどあったことなど、我慢しなければならないことがありました。
 しかし、全般的には、当地の生活に慣れるにしたがって、ストレスをためることなく順応し、楽しく充実した生活ができています。
高級クラスの学生たちと記念撮影
高級クラスの学生たちと記念撮影

白水寨の山へ学生たち、妻と一緒に山登り
白水寨の山へ学生たち、妻と一緒に山登り

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