今年の4月、中国政府は河北省に「雄安新区」の設置を発表した。国家級の開発新区として、「千年の大計」「国家の大事」と位置づけられており、1980年の「深圳経済特区」、1992年の「上海浦東新区」と並ぶ壮大な国家プロジェクトとなっている。「雄安新区」とは、一体どういうことだろうか、何故河北省に「雄安新区」を新造することになるのか。
分かりやすく言えば、北京一極集中を緩和するため、北京から約100㎞離れている河北省の容城県、雄県、安新県に首都北京の副都心を作る大規模なプロジェクトのことである。「雄安新区」の名称は、河北省に属する雄県と安新県から一文字ずつ取って命名されており、予定している開発面積は、当初は100㎢、将来的に2,000㎢と、東京都の面積に匹敵する規模となりそうだ。それに伴い、想像もつかない巨大なインフラ投資・建設の需要を生み出し、中国の経済成長に大いに役立つことになろう。
「雄安」という地域は、地理的・歴史的・文化的に新都市づくりに有利な条件を備えているので、国際標準と中国の特色が融合された、ハイレベルな開発・建設が可能であり、実に大英断だった。地理的に言えば、北京と天津との距離はともに約100㎞で、正三角形の形状をなしている。しかも、河北省の保定市と隣接し、交通アクセスの面にも恵まれている。また、良好な生態系を保ち、今現在、経済発展が比較的立ち遅れているが、将来の発展見通しはとても明るい。歴史的に、「雄安地区」は昔の雄州、安州の管轄地であり、長い歴史があり、名士が輩出したところでもある。昔からこの辺は中国北方の生態や人文融合の錦地であるばかりでなく、華夏の粟作農業の振興地及び茶馬貿易、シルクロードの会合地としても名声を博した。
「雄安新区」で特筆したいのは白洋淀である。白洋淀は中国華北一の淡水湖で、中国中に知られた観光名所である。「雄安新区」を構成する安新県、雄県、容城県は白洋淀を囲い込み、流れてくる河川や湖沼が交錯し、素敵な河川・内湖景観を造りだしている。さらに、この辺は、「中国温泉の里」と呼ばれるほど地熱資源に恵まれているので、近い将来インフラの整備を進めることで、温泉付き住宅が新区居民の新しいライフスタイルになるかもしれない。
文化的に、「雄安」は昔の辺塞文化の代表的土地だった。五千年にわたる歴史の中で民族融合と激戦を繰り返してきた悲喜交々の時代絵巻が数多く残り、雑劇や伝奇の素材として、現在になっても生き生きと物語られている。この地域の人々は昔から誠実・信用を重んじ、豪侠・正義を尊ぶ美徳を持っており、武術や音楽が好きで、文武兼備という地域ならではの魅力が伝わってくる。近い将来、かつて静寂してきたこの華北大地に新城作りが始まる。ぜひ皆様も注目していただきたい。
(和平里)
雄安新区
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