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日本語教育・再考(Web版)

 

技能実習生や働く外国人に対する日本語指導を考える〈その5〉
~『あたらしいじっせんにほんご』を教科書に使って教える2~(2013年7月1日号掲載)

公益社団法人 国際日本語普及協会
地域日本語教育担当理事 関口 明子

 では、1課からはじめましょう。各課の構成は決まっています。「1くちならし」「2A しつもんに こたえる B よくきいて そのとおりにうごく」「3くりかえし いって おぼえる」「4はなす れんしゅう」になっています。

1 くちならし
 文字通り口慣らしが目的なので覚えることを目的としていません。9課まで毎回「数」の口慣らしが続きます。日本語の音やリズムに慣れることが目的です。教師が自然の速さで言い、その後学習者は同じように言ってみる。覚えようとしない方がいいです。自然と慣れて口から出てくることが大切です。「数」は技能実習生や働く外国人にとっ て生活や仕事には切り離せない重要なものです。その日が5課に入る日でしたら、1課から4課までの「くちならし」を全て練習してから新しい「くちならし」に入ります。日本語の2拍子のリズムに乗せて「いち、にっ、さん、しっ」と元気よく練習しましょう。新しい課の「くちならし」に入るときは、電話番号なら携帯電話、時間なら時計、日付や曜日のときはカレンダー、「~つ」のときはボビンケースやビスなどのそれぞれの専門に使用する実物などをもってきて学習すると理解もはやいです。10分程度でいいですから毎回継続してください。この「くちならし」は、VT法(ヴェルボトナル法)(注1)をもとに考えました。

2A しつもんに こたえる
 1の「くちならし」で練習した数字を使ってコミュニケーションを試してみるところです。ここも、覚えることよりも慣れることが目的です。教師と学習者、学習者と学習者で質問をし合ってみましょう。この時、前号で説明した黒板にある「ともだちことば」と「ていねいなことば」の絵カードを指しながら練習します。黒板に電話番号の数字をいくつか書きます。教師が黒板の数字を指して、教師「~さん、電話番号は何番」(ともだちことば)学習者「03の3459の9620です」(ていねいなことば)
 この練習を一通り全学習者と行います。次に教師から学習者、学習者から教師、学習者同士で実際に本人の電話番号を聞き合います。

教師  「~さんの電話番号は何番」(ともだちことば)
学習者 「○○の○○○の○○です」(ていねいなことば)
学習者 「先生の電話番号は何番ですか」(ていねいなことば)
教師  「○○の○○○の○○」(ともだちことば)
学習者1「電話番号は何番」(ともだちことば)
学習者2「 ○○の○○○の○○」(ともだちことば)

 上記のように色々なパターンで、全員がコミュニケーションの練習をしてみるようにします。
 次に同様に教科書15頁の登場人物を使って、「~さい」の練習をします。色々なパターンを使って質問し合ってください。「ワンさんは何歳」「29歳です」「田中さんは何歳」「34歳」などなど。次にお互いに実年齢を聞き合ってみましょう。その時に年齢の上の学習者と下の学習者で、「ていねいな ことば」と「ともだちことば」で練習し合ってください。こうして徐々に数字の読みや音に慣れてきます。次回は「2B よく きいて その とおりに うごく」に進みます。

注1.VT法(ヴェルボトナル法)
Verbo-Tonal Systemの略。ザグレブ大学教授ペタル・グベリナ博士を中心に、1955年頃、旧ユーゴスラビアのクロアチア共和国の首都ザグレブで生まれた、聴覚の法則性や機能に関する理論である「言調聴覚論」に基づく音声指導法である。
人が言語音を聞きとり、意味を理解する時、脳は個別音から刺激を受けているのではなく、拍、アクセントを含むリズムやイントネーション等のまとまりとして反応する。それゆえ、外国語を学習するときは、その言語固有のリズムやイントネーションを体得することが先決という理論に基づく。

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