2024年、新たな年を迎えて…
公益財団法人日中技能者交流センター 理事長 岡島 真砂樹
あけましておめでとうございます。
旧年中は、当財団に対しまして、会員の皆様をはじめ関係各位にひとかたならぬご協力を頂き、ありがとうございました。
おかげをもちまして、昨年は新型コロナウイルス感染が一定落ち着く中で、技能実習生の入国が順次すすみ、特定技能外国人の受け入れも増えてきております。
しかしながら、長期に及ぶコロナ禍での度重なる入国制限や入国停止措置等の影響は、事業面・財政面において未だに色濃く残っています。
本年は、技能実習制度が新たな制度へと動き出す年となりますが、当財団は今後もアジアの若き人材育成や相互理解に基づく交流等を通して、各国の発展に寄与してまいる所存です。
関係各位からの信頼を得て、その期待に応えられるよう、役職員一同尽力してまいりますので、本年も皆様のご支援・ご協力をお願い申し上げます。
本年が皆様にとりまして健康・安全で、良い年となることを心からご祈念申し上げ、新年にあたってのごあいさつとさせて頂きます。
技能実習制度から新たな制度へ
昨年11月末、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」は、現行の技能実習制度を発展的に解消し、新たに「育成就労」(仮)制度の創設を盛り込んだ最終報告書をまとめ、政府に提出しました。特定技能制度については、適正化を図った上で現行制度を存続するとしています。
受入れ対象分野や、受入れ見込み数の設定、監理団体の厳格化や日本語能力の向上方策など、当財団に影響を及ぼす変更点はあるものの、技能実習機構をはじめ、受入れ企業、監理団体、送出し機関等の枠組みは、維持されることになります。
とりわけ、監理団体の許可要件等の厳格化については、1986年の設立以来、長年にわたり中国やベトナム等の送出し団体や関係機関との連携を深め、技能実習機構からも優良監理団体の資格を取得し、事業を継続してきた実績があります。
今後も改定の内容をふまえ対応するとともに、実習生はもとより関係団体・企業からの一層の信頼を得られるよう事業を展開していきます。
報告書では、優良受入れ機関の認定要件に日本語教育支援が示されています。
当財団として、これまでも「日本語検定試験」合格者への報奨金や企業における日本語教室などの支援に力を注いできました。今後さらに日本語支援システムの活用などを模索しながらとりくみを強化していきます。
制度改定に向けては、本通常国会に法案が提出され、成立の後2025年度からの施行が見込まれています。
財団の「組織と事業の在り方プロジェクトチーム」での検討を精力的にすすめ、しかるべき対応策を講じていきます。
当財団を取り巻く課題と今後に向けて
技能実習制度の改定と時を同じくして、「新しい資本主義に向けた公益財団法人改革」も進められています。資金をより効果的に活用するための財務規律の柔軟化・明確化や公益認定等の行政手続きの簡素・合理化が主な内容となっていますが、当財団としましても対応が求められます。
財団の事業の柱の一つである日本語教育事業は、コロナウイルス感染のため中国への日本語教師派遣事業が行えず、この間「スキルアップオンライン研修」を実施してきました。
当財団は、2026年に設立40周年を迎えます。財団を取り巻く課題は山積していますが、「ひととつながる」「ひとをささえる」「ひとをそだてる」をキーワードに、引き続き国際貢献・国際交流に資する諸事業の推進・発展に努めてまいります。
2023年度 第2回全国監査会議を開催しました
全国から47名が参集
11月14日、「2023年度第2回全国監査会議」が久しぶりに対面方式で、対象者(役員、総合技能交流部・役職員)ほぼ全員の出席で開催されました。
冒頭、岡島理事長より「日々の業務に関する感謝を申し上げます。今年度初めての対面で実施される監査会議の催すことができました。この機会を活かし、率直な意見交換を行ない、今後の事業につなげていただきたい。また、有識者会議で議論されている制度改革が取りまとめの段階にきている。制度改革も含めセンター変革の時期になっているので、みんなの力添えをお願いしたい」と挨拶しました。
また、コロナ禍の中、業務上、対面が難しかったため、新入職員2名(バーさん、ヴィンさん)、新任契約職員1名(西田さん)、新任理事(須藤さん)の紹介および様々な業務で連携する総務・財政部のメンバーの紹介を行いました。
第2回全国監査会議は、以下の議事内容で塩田常務が進行しました。
①「2023年度上半期事業概況と下半期以降の取り組みについて」(鮎澤専務理事)
②「監査活動等に関する事項」(塩田常務理事・大谷常務理事・八野常務理事)
③講演「有識者会議最終報告(たたき台)の内容と準備に向けて」
(講師:(公財)国際人材協力機構(JITCO)実習支援部副部長 斎藤 環氏)
④意見交換
⑤まとめ(新井副理事長)
「2023年度上半期事業概況と下半期以降の取り組みについて」(鮎澤専務)は、明解にポイントを説明されるとともに、まとめとして、「財団を取り巻く環境は大きく変化しており、今後、制度改革(技能実習制度と特定技能制度の制度改革、公益法人改革)がさらに加速していく。改革内容にあわせ、当財団の〈第二次在り方PT〉の場で財団の組織と事業の再構築に着手するとともに、予想される変化に備えて全員が力を合わせて取り組むこと」が確認されました。
また、斎藤氏の講演では、「有識者会議最終報告(たたき台)」の11月14日時点での報告、予想される動向等のとても分かりやすい説明を受け、出席者全員で情報共有を図りました。
その後、意見交換をおこない、最後に、新井副理事長から意見交換であげられた意見を含め全体の総括があり、会議を終了いたしました。
この会議において財団の重要事項がお互いに確認されるとともに、全員が集合し、対面方式で開催される会議の大切さを再認識されました。
発言する岡島理事長
新しいメンバーが紹介されました
日本語教師として中国の教壇に立つ「アーカイブス」ができました。
副理事長 新井力
財団ニュース182号(7月1日発行)は、中国に派遣された12期と13期の日本語教師の集いを伝えています。派遣から20年以上たった今もなお繋がり続けて来たことに嬉しい驚きを感じるとともに、その意味と背景は何だろうかと考える機会を与えてくれました。教師と学生の互いの顔が見える教室の現場から教師派遣事業を見返すこと、私が行きついたのは、そこに答えの糸口を見つけ出すことでした。そして、ここを出発点として、一過性ではない「アーカイブス」として現場の実相を残す企画が立ち上がりました。
「日本語教師として中国の教壇に立つー学生たちと過ごした日々」は、財団のホームページ(※下記QRコードより閲覧できます。)に掲載されています。第13期の派遣教師をはじめ6名の方々のご協力を得て、企画趣旨に沿ってコンパクトにまとめていただきました。ご閲覧いただければ幸いです。
なお、中国への日本語教師の派遣は、2019年以降中断しています。
アーカイブス「日本語教師の記録」
受入企業担当者だより
より良い実習生活を実現するために
本部 長村 潔
今回は技能実習生をどの様に決定しているのかをご紹介したいと思います。
それぞれ企業様によって、求められるスキルや体力等違いはあるので、若干は異なりますが、基本的には真面目で、やる気のある実習生を要望されます。しかし、一度会っただけではなかなか見抜くことは出来ません。そこで、いろいろな試験を実施して決定しています。
私は建設関係の実習生が多いのですが、この場合は体力、運動能力、計算能力、そして日本語能力となります。工場の場合だとさらに集団生活の経験や手先の器用さや目の良さ等も重要視される場合があります。
また、個別の面接では一般の企業と同様に志望動機などを聞きますが、例えば、いくらぐらい貯金をしたいか…そのお金はどの様に使いたいかを確認します。この時はあまりに希望額が高い場合は、来日しても希望に添えないので、他の項目が良かったとしても、採用しない場合があります。
この後、採用者が決定するわけですが、可能な限り翌日に家族との面談を実施します。
ベトナム、インドネシア等の場合は日本語の現地研修期間が約6か月となりますが、やはり若い実習生にはついて来られない方も出てきます。家族面談でご家族のご理解を得られていると、本人が弱気になった時に後ろから支えてくれるので、是非行いたい内容です。
こうして、6か月後に一皮むけた実習生が来日します。企業配属はさらに1か月後、そこからが新たなスタートとなります。
合格者の家族面談 (来られない方はZOOMで参加しました)
技能実習情報掲示板
新たな制度「育成就労制度」(仮称)(報告書提案)のポイント
~技能実習制度と特定技能制度の在り方に関する最終報告~
政府の有識者会議は外国人の人材の確保と育成を目的とした「育成就労制度」(仮称)の報告書を提案しました。
技能実習法(2017年)、特定技能制度(2019年)は施行から5年を目処に見直しすることから、今回、関係者による議論が開始され11月30日に最終報告書が法務大臣に提出されました。報告書によると、「育成就労制度」(仮称)を創設し、技能実習制度は発展的に廃止となります。今後は今春(2024年)に政府が関連法案を通常国会に提出し、具体的な制度・要領が作成される見通しです。
新たな制度(提言の概要)の主なポイントは以下のとおり
【公益財団法人国際人材協力機構(JITCO)12/1ニュース▶お知らせ より】
■ 現行の技能実習制度を発展的に解消し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度(仮称「育成就労制度」)を創設
■ 受入れ対象分野は、特定技能制度における「特定産業分野」の設定分野に限定
■ 転籍については、「やむを得ない場合」の範囲を拡大・明確化し、手続きを柔軟化するとともに、一定の条件の下、本人の意向による転籍も認める
■ 監理団体の許可要件を厳格化
■ 特定技能外国人に係る支援業務の委託先を登録支援機関に限定するとともに、登録支援機関の登録要件を厳格化
■ 本人意向の転籍要件に関する就労期間について、当分の間、分野によって1年を超える期間の設定を認めるなど、必要な経過措置を設けることを検討
こうした報告書の提言が出された背景には、外国人との共生社会の実現を目指していることがあります。そのために人権保護や権利の強化、技能・知識(キャリア)向上、日本語能力向上の推進等が新たな制度にも反映されています。
また、国・自治体には共生社会の推進のために法令遵守、転職支援、日本語教育支援など整備強化を求めています。
課題となっている失踪防止対策として、多くの実習生が母国の送り出し機関や仲介者に多額の手数料を支払って来日していることから、費用負担軽減から受け入れ企業と費用を分担することも提案されています。
日本のお祭りを楽しみました!
伝統文化とふれあう実習生
ふれあい日本
2023年8月4日、㈱サンデリカ佐賀事業所に所属している実習生たちが、「サンデリカチーム」の一員として、佐賀県鹿島市で開催された「鹿島おどり」に参加しました。
先輩の方から髪飾りを付けていただき、そろいの社名を染め抜いた法被に身をかためた彼女たちは、地域の歴史ある行事を堪能しました。
「鹿島おどり」とは…1962年の7月8日に鹿島市で大水害が発生しました。
数日続いた大雨の影響で堤防が決壊し、想像を絶する被害になりました。その水害からの復興を願い、また踊りで市民を元気づけるために始まったのが「鹿島おどり」です。
踊りは「鹿島一声浮立」「鹿島小唄」「鹿島節」の3種類があり、アナウンスの合図に応じて踊りが切り替わります。
鹿島おどりはチーム単位で参加し、事前に申し込みが必要です。
会場には屋台が出店します。同時に「かしま夜市」が開催され、ゲームコーナー等で遊べます。
ふりがな付きPDFはこちらから
にほんごでものがたりしませんか
今回の「にほんごで ものがたり しませんか」は、2023年8月5日と6日に開かれた愛媛県今治市の伝統文化である「おんまく祭り」に参加した今井タオル㈱に所属するファム ティ ズオンさんとホアン ティ ハイ リーさんから、祭りに参加した貴重な体験をつづった文章を寄せていただきました。
ちなみにリーさんは、日本語検定N2合格、今年はN1に挑戦するとのことです。
私の知らない伝統文化
ファム ティ ズオン
日本に来てから今まで、コロナで日本の伝統文化に参加できなかったが、今年の8月にお盆祭りに参加しました。やっぱり楽しかったです。
ベトナムではこんなお祭りはありません。
私が知らない日本の伝統文化がたくさんあると思います。たとえば、日本ではお盆まつりに花火がありますが、ベトナムでは大晦日にしかありません。ベトナムに帰っても後悔しないように日本の文化だけじゃなくて日本の食べ物とか綺麗なところにもチャレンジしたいです。
楽しみを残したフェスティバル
ホアン ティ ハイ リー
日本は、日出ずる国として知られています。素晴らしく美しい景色だけでなく、非常に魅力的な伝統的な祭りもあります。
例えば、桜祭り、灯篭祭り、花投げ祭り、阿波おどり祭りはどうですか。
8月中旬には阿波おどりが開催されます。多くの参加者が集まる国内最大級のお祭り。
ここ4年、コロナの影響で阿波おどりは開催されていない。今年8月、コロナが終息したこともあり、再び全国各地で開催されました。今治も開催されています。
私の会社も参加登録しました。そして私たちはおどりを教えられました。
フェスティバルで私はダンサーのグループによるダンスをみました。パフォーマンスは多くのダンスに分かれています。男性の踊りは、活発で賑やかですが、子供や女性の踊りは、穏やかで優雅です。独特の踊りを見るだけでなく、日本の伝統衣装も鑑賞できます。
お祭りが終わったら、ぜひ日本の文化、祭りについて知りたいです。日本の祭りに参加したいです。
会社に私が日本のお祭りにたくさん参加できるお願いをいたします。たくさんの感動とたくさんの楽しみを残したフェスティバルでした。
会社の皆様本当にありがとうございました。
前列左がズオンさん、右がリーさん
ふりがな付きPDFはこちらから
一ツ橋
新しい年を迎え、「技能実習制度」は、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度へと生まれ変わり、日本語教育も一定水準への到達が求められるようになりました。
日本語の修得は、日本において実習目的で就労する技能実習生にとって、業務中はもとより、有意義な日本での生活を送るためにも必要不可欠なものです。しかし近年、技能実習生の来日時の日本語の語学力に濃淡が見られ、入国後講習にも支障をきたしているケースもあり、失踪など配属後のトラブルの一因にもなっています。
技能実習生本人が自覚をもって日本語修得に向け努力しなければならいことは当然ではありますが、送出機関、実習実施者、監理団体など技能実習生に関わるすべての人が改めて日本語教育の重要性を再認識し、充実した実習生活が送れるような環境づくりに向け取り組むことも重要です。
(E.S)