新型ウイルスをめぐる最近の状況に寄せて
日本語教育の現場に学ぶ
このニュース原稿は、当初、中国における日本語教育事業の展開について書く予定にしていました。しかし、2月7日現在クルーズ船搭乗の3,700名以上の乗客乗員が横浜港で下船できないなど新型ウイルスが世界的に猛威を振るっている中で、そして、とりわけ私たちの中国友人の安否が気がかりなことから少し切り口を変えて書き出すことにしました。
私たちには、数多くのビジネスパートナーが中国にいます。皆さんが私たちの友人ですが、とりわけ、中国職工対外交流中心、人社部国際交流服務中心、そして中国科学技術部の外国専家服務司と中国国際人材交流協会、中国対外人材開発諮詢公司とは、長い歴史の中で世代を超えて「老朋友」(ラオポンユウ)の関係を築いてきました。
新型ウイルスをめぐって中国国内の状況が報道されるたびに心が痛むのは、中国の友人たちがこうした状況の中でどのように暮らし、仕事をしているかということです。出来ることならば、飛んで行って直接私たちの激励のメッセージを伝えたい所ですが、それもままなりません。ただ、私たちは、この困難な時にも、いや困難な時だからこそ私たちの中国友人とともにあることをこの紙面を通じて伝えたいと思います。
日本もウイルス感染者が中国についで2番目に多い国となり、社会的な不安が日に日に高まっています。こうした状況の中で私たちに求められているのは、差別やバッシングが悪意ある情報やフェイクニュースに惑わされて起こらないように、正確な情報に基づいて冷静に判断し、行動することだと思います。
思い起こすのは、2012年、中国の反日デモの際に示された草の根国際協力の力です。この年の反日デモは、かつてないほどの規模で日系のスーパーや企業、日本車などが抗議活動の対象になりました。私たちは、大学などに派遣した日本語教師の安否を心配しましたが、どのキャンパスでも教え子たちが教師の安全を守ってくれていました。この混乱にありながらも、状況を冷静に判断し行動した学生たちの姿は、教師派遣事業の意義と草の根国際協力の力強さを大きなインパクトをもって私たちに教えてくれました。
さて、本題の日本語教育事業に少し触れます。特筆すべきは、2019年12月20日、中国科学技術部の中国国際人材交流協会と「日中の人材育成と友好協力関係の促進に関する協議書」を締結したことです。中国における日本語教育分野での活動は、中国国内の行政機構改革(2016年)後、停滞を余儀なくされていましたが、関係機関からは高い評価を得ていました。その評価が、今回の協議書の締結につながり、新たな枠組みの中で新たな一歩を踏み出すことにつながりました。
協議書の付属文書では、具体的な協力の形として「中国人日本語教師のスキルアップ研修会」の開催を謳っています。スキルアップ研修会は、中国国家外国専家局がパートナーであった時代、2015年から江西省、福建省、四川省、青島市の4つの都市で開催しています。過去6回の経験から学んで、より良い研修会を目指したいと思います。研修会は、中国人日本語教師に日本語やそれを超えて日本の文化などを教えるという、トレーナーズ・トレーニングです。日本人日本語教師の派遣事業と同様に、一人の教師の下で何十人、何百人、もっと言えば何千人もの学生が学ぶわけですから、2012年反日デモの際にキャンパスで見られた教師と学生の関係のように、質の面でも規模の面でも草の根国際協力のモデルといえるでしょう。
新型ウイルスは、さらなる混乱を私たちの社会にもたらすかも知れません。状況を冷静に判断しつつ、日本の皆さんとともに、そして、中国の友人とともに力を合わせてこの困難を乗り越えてゆきたいと願っています。
2020年2月19日 副理事長 新井 力
地方駐在員だより
全員合格!! 初めてのマシニングセンター職種昇級試験
駐在員 程 一軍
わがHRsDアジア財団で初めて、マシニングセンター職種の技能実習生3名が昇級試験で、全員合格できました。
関係技能実習生3人が日本の受入会社に配属される前は、マシニングセンター職種の基礎技能としてのフライス盤操作技術を習得していました。10カ月だけの勉強と実践で、3人ともマシニングセンター操作ができるようになりました。
同昇級試験は学科試験以外に、実技試験は既定プログラム入力から、治具セッティング、規定通り作動までの全コースです。
マシニングセンター技術は途上国にとってレベルの高い技術なので、技能実習生が日本での3年間でマシニングセンター技術を身に着けて帰国することにより、母国の製造業スキルアップに大変大きな役割を果たすことが期待できるでしょう。
真剣に作動を見守る
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一ツ橋
不条理!
春節をまたぎ拡大した新型肺炎感染症は、世界中に大きな混乱と不安を引き起こしている。この混乱は不安と恐怖に裏打ちされ、不条理を顕在化させてもいる。技能実習制度においても新型肺炎症の広がりは大きな影響を及ぼし、技能実習生の来日及び帰国において混乱が起こっている。特に、技能実習を修了し、中国に帰国しようとしても、多くの飛行機は運航停止となり、帰る手段を持たない。こうした緊急事態でも、在留期限内に帰国しなければオーバーステイとなり不法滞在者扱いとなるという。
また、感染症の発生源が中国であることから、欧米では不当なアジア人差別、偏見が横行しているという。
また、国内でも一部の商店は、中国人に商品を売らないということも報道される。なんと不条理のことか。社会の不安と恐怖は弱者に対する暴力と不条理を生む。何よりも、正確な情報を峻別し、冷静にふるまうことが必要ではないか。 (T・O)