2015年度 外国人技能実習生・研修生日本語作文コンクール
センター実習生が3年連続受賞の快挙
『健康の相手』で優秀賞
『白衣の天使』『料理の力を、信じている』で優良賞を受賞
JITCO(公益財団法人国際研修協力機構)が主催する「日本語作文コンクール」への取組は、実習生の日本語能力アップに寄与するものとして、当センターも力を入れて支援していますが、一昨年、昨年につづき今年も2114編の中から、1編が優秀賞、2編が優良賞を 受賞しました。
2015年10月2日、JITCO開催の表彰式にあわせて、受賞者3名と受入れ企業の関係者の皆様を当センター本部に招き、企業関係者にお礼を申し上げるとともに、人見理事長から受賞者に表彰状と記念品を贈呈しました。
JITCOでの表彰
優秀賞『健康の相手』
ZHANG CUI CUI
国籍:中国 職種:電子機器組立て 実習実施機関:㈱エヌビーシー
日本に来てから4ヶ月が過ぎました。初めて実習生として来日し、センターで受けた講習はとても楽しくて、一生忘れがたい思い出になりました。
この4ヶ月間、なんか月日のたつのが速いと思います。入社した後、もっとも感じさせられたことは健康ということです。入社したばかりで、きっとおかしいと思われるでしょうが、人間として健康はもちろん大切なことです。しかし、仕事をやっていく内に私はこの言葉の意味を考え直しました。健康の相手は人間だけではなく、電子部品でも健康があるのです。
会社に入社したばかりで、初めて組立ての仕事をした時、作業の手順とか細かい注意点とか、うまく理解できなくて、恼んだこともありました。その時、私はほんとうにできるかいつも自問していました。私の仕事は電子部品を組付けることです。できあがった部品を検査して、不良品があるかどうかを確認することです。最初に工場を見学した時、あぁこれがこれからやる私の仕事なんだ。意外にやさしいじゃんと思っていたが、実際にやれば気をつけなければならないことがいっぱいありました。
ある日、作業中にうっかり部品を落としてしまいました。私は考える間もなく、すぐ部品を拾うつもりでしたが、一緒に作業する日本人の先輩は私を止めました。「拾わないで、まずは非常ベルを押して、準直さんを待ってるの、勝手に拾ってはいけませんよ。」と言いました。実はどうして拾ってはいけないのかよくわかりませんでした。落としたが、部品をこわさなかったら、大丈夫じゃんと思いました。私の戸惑いに気づいた日本人は私にこう言いました。我社は車の電子部品を生産しています。現在、車は世界中でもっとも便利な乗り物であり、車の品質は何よりも大切なことです。人間の安全は車の品質いかんにかかっています。落下した部品は損なってしまう訳ではないですが、二度と使うことができません。小さな事でも、まかり間違えば大変な事になりかねないです。そうですね。私はやっとわかりました。それは部品の健康状態じゃないですか。部品の品質保証は私たちの使命です。そうしないと、品質どころか車の安全を守ることもできません。別の会社で働いている友達は文句を言いました。会社は千分の2の不良品を見つけるために、2時間残業になるそうです。私はそれがありがたいことだと思います。その2時間のおかげで、不良品を発見できる上に、使用者の健康も守りました。大変なやり甲斐があると思います。
日本人の先輩に言われたことで深刻な思いになりました。誠に感謝しています。これから生活でも仕事でも自分の健康と部品の健康を大事にして頑張りつづけたいと思います。
実習に集中しています
優良賞『白衣の天使』
HUANG WEI MIN
国籍:中国 職種:電子機器組立て 実習実施機関: ヤバシテクノ㈱
「白衣の天使」、どれだけの人が、小さいときの夢としたでしょう?先生が“大人になったら何になる?”と訊ねたことを覚えています。皆、異口同声に“お医者さんになりたい”と言いました。実は当時、私はなぜ医者になりたいか、よく判っていませんでした。ただ、テレビで長い白衣を着た人が皆に讃えられるのを見るにつけ、凄いと感じていました。この考えを持続けたまま成長しました。
2年前、青い海に囲まれた国“日本”に来ました。若者の勇気と好奇心を携えてこの土地に足を踏み入れました。異国でいろいろな経験、体験に遭遇しました。生活で意外なことにも遭遇しました。
幸運と言うべきか、不幸と言うべきか判りませんが、偶然、身体検査で異常で見つかり入院、治療が必要になりました。手術当日、手術室へのエレベーターの中での、あの数十秒・・なんと・・比べ物がない程長い時間に感じました。ある種の怖さと、緊張があったからです。エレベーターの“チーン”の音、ドアが開いた、その先に、まず目に入ったのは手術台ではなく、冷え冷えとさせる機械でもなく、いくつかの笑顔でした。ひとこと、ひとことが人を安心させる“がんばって”の言葉。手術台に横たわったその時、先生が訊ねました“怖いですか?”どう答えるべきか判らないでいると、先生が私の目を見ながら“大丈夫!目を閉じて、何も考えないで!私たちを信じて!”と話しました。周りの看護婦さんは、微笑みながら私に“がんばって”と言いました。麻酔が打たれ、どれだけの時間が経ったか判らないが、ぼんやりとした意識のなかで、だれかが私をよぶのを聞きました。
私に“貴女の名前は?ここはどこ?”と訊ねました。私は無意識のうちに答えました。夕方になって、やっと麻酔から醒め、看護婦さんを見ました。彼女は微笑みながら訊ねました。“どうですか?どこか具合の悪いところは?”私は温かさを感じ、一人ぼっちではないと思いました。一晩中私のために、体温を測り、氷枕を換える、実はこの苦労は私にはよく判ります。私にも夜勤があります。でも、私には、彼女達のように、細やかなにやることはできません。更に驚かされたのは彼女達は、どの患者さんにも辛抱強く、気配りすることです。お年寄りが廊下を行ったり来たりして鍛錬するのを助けるのは勿論、毎回我慢強く、お年寄りに食事をさせる。動けない患者さんを繰り返した体を拭く、これらは私に、彼女達の仕事に対する態度とエネルギーの源泉はなに?という疑問を抱かせます。
私は、この精神は国境はなく、責任は医者の基本であるべきだと思います。しかし、広々とした愛は個人が付け加えるものです。ですから、私に支えがないとき、平凡だけど偉大な白衣の天使が私にくれた力に感謝します。
私は影響を受けて、人に対して微笑みで接する、恩に感謝することを学び取りました。これはこの国で私が得た最大の精神面の財産です。
JITCOの黄さんコーナー
優良賞料理の力を、信じている
MAO BEI BEI
国籍:中国 職種:電子機器組立て 実習実施機関:㈱エヌビーシー
ある日、偶然にNHKのテレビプログラムでこのようなドキュメントを見ました。ある普遍な家庭の主婦が高級なるレストランでもなく、有名な店でもなく、ただ自分のうちの台所で、四千種類以上、人々に知られているメニューを作りました。
彼女は世界の主婦と呼ばれている栗原晴美さんです。料理専門出身ではないのに、彼女はどうやってこんなすごいことができたのかなって、最初は驚きました。でも、番組を通して、ようやく彼女が成功した理由がわかりました。
それは、彼女は料理の力を信じているから、美味しくて、素晴らしい料理を作ることができるのです。
私が初めて日本へ来て、会社へ行った時のことを思い出しました。会社へ行く前に、研修センターで食べた料理は全部食堂のおばさんが作ってくれましたから、そのプレッシャーも感じませんでした。しかし、会社へ行くようになって、自分でご飯を作らなければならなくなりました。その時私は慌てました。食事前の食材準備とか、食事後の整理とか、一番大事なのはやっぱり料理の味でした。家で料理を作る親の辛さもよくわかりました。
不真面目な態度で作った料理は少しも美味しくありません。スーパーで買った弁当をいっぱい食べた後は食べたくなくなりました。どうすれば美味しい料理が作れるのか、私は考え始めました。失敗を重ねた後一つ大事なことに気づきました。それは新鮮な食材は大事ですけど、心を込めて料理を作ることのほうがもっと重要です。国内にいた頃のことを思い出しました。両親はいつも心を込めて私の為にご飯を作ってくれました。料理が美味しく食べられることはきっと親からの愛を感じたからだと思います。
料理を失敗した時、いつも諦めろ「これ以上無理だ、もうやめましょう」ってこういう考えが頭からわいてきます。でも、おいしい料理を食べるために、もっと頑張らなければならないと思います。料理を成功して、友達が「おいしい」と褒めてくれる時、本当にうれしいです。一人寂しくて両親に会いたくなる時、料理は人を強くします。
食材の自己ぎせいは私達に美味を持ってきました。食材までこんなえらいことができるのに、一人の人間として、生活にほんの少しの挫折と出会っても、勇気を出して、挫折に向き合うべきだと思います。
調味料をいくら入れたら、最高の味が作られるのかなって、何度も何度も考えます。栗原さんはそれを美味しく作るために、火の強さや調味料の量や、作る時間などいろいろなことを要求しています。私から見れば、それは全部すごく面倒なことですけど、今は私の趣味になりました。
これからの人生の中に、料理を作る時と同じような気持ちを抱いていれば、何をしても、きっとうまくいくと思います。
実習は順調です
編集・発行 公益財団法人国際研修協力機構 『2015年外国人技能実習生・研修生日本語作文コンクール優秀作品集』2015年10月発行、22頁、39頁及び41頁より承諾を得て転載(原文のまま掲載しています)。
2015年度上半期事業等について全会一致で承認
第16回理事会、第12回臨時評議員会
10月9日(金)14時より第16回理事会を、また同日16時より第12回臨時評議員会を開催した。
冒頭、人見理事長から実習生制度改正の方向、2015年度上半期事業実施の状況そして来年度に迎える当センター30周年記念事業の取組について触れた後、新井専務理事ほか担当役員より具体的提案があり、審議の結果、全ての議案について全会一致で承認された。
また、新通称名について提案され、2016年1月に公表し、2016年4月から使用することになった。なお定款上の名称は当面変更しない。
【新任評議員】
梅田 伸二 情報産業労働組合連合会 組織局長
山田 昌敏 全日通労働組合 中央副執行委員長
川本 淳 全日本自治団体労働組合 中央執行委員長
【退任評議員】
安藤 京一 情報産業労働組合連合会 組織局長
石川 茂美 全日通労働組合 中央副執行委員長
氏家 常雄 全日本自治団体労働組合 中央執行委員長
【新任理事】
難波 淳介 全日本運輸産業労働組合連合会 中央執行委員長
阿野 豊 全国労働者共済生活協同組合連合会 常務執行役員
【退任理事】
山浦 正生 全日本運輸産業労働組合連合会 中央執行委員長
秋田 元次 全国労働者共済生活協同組合連合会 常務理事
第12回臨時評議員会
技能実習の新たな制度の徹底に向けて
受入企業代表者会議を3地区で開催
中国の送出し団体(職工中心、人社部服務中心)からの代表を招請して、受入企業代表者会議が四国地区(10月14日)、関東地区(10月16日)、東海地区(10月21日)で行われた。
今国会(第189通常国会)で提案された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(=「技能実習法」)は次期国会への継続審議となったが、来年にも「技能実習法」での実施が予定されている。
会議では現在の実習制度の現状と課題そして、「新たな技能実習制度」についてJITCO(公益財団法人国際研修協力機構)からの講師による講演があり、続いて出席者による質疑が行われた。
現状については、2014年度は実習生の新規入国者は約10万人弱、在留者は17万人弱と毎年増加傾向にある一方で、技能実習生(2号)の行方不明者が3千人を超えて増加、また不正行為の類型別では4割を「賃金の不払い」が占めるなどの現状について具体的事例に合わせ、再発防止策についても共通理解をはかった。そして、「技能実習法」では、閣議決定されている「日本再興戦略会議2014」において「外国人が日本で活躍できる社会へ」の基本的な考えのもと、「国際貢献」を目的とする技能実習制度の趣旨の徹底をはかる目的から制度の諸改正が準備されている現状、また介護実習制度の検討状況が報告された。
これを受けて、中国の送出し団体である職工中心、人社部服務中心の代表からは、グローバル社会の一層の進行の中で、中国での実習生送出しの国内事情や現状報告とともに、実習制度の趣旨を踏まえた取組の強化について述べられた。また、総合技能交流部からは、実習生事業の現状、今年度の最低賃金改定の報告、マイナンバー制度への対応などについて質疑を行った。技能交流部としても、今後とも「技能実習法」による制度変更については適切、速やかに情報の発信とともに対応してゆくことを述べ、会議を終了した。
1.四国地区(10月14日)
かんぽの宿観音寺
講演
JITCO出入国部総括副部長 三浦ちじこ氏
中国職工対外交流中心技術交流処処長 査良青氏
2.関東地区(10月16日)
センター会議室
講演
JITCO出入国部企画管理課課長 中村淳氏
東京労働局労働基準監督官雨森哲主氏
中国職工対外交流中心技術交流処処長 査良青氏
3.東海地区(10月21日)
羽島市文化センター
講演
JITCO出入国部企画管理課課長 中村淳氏
中国人力資源和社会保障国際交流服務中心総合処長 候瑞方氏
関東地区受入企業代表者会議
中国人介護人材育成のため訪中協議を実施
中国人介護人材の受け入れに向けた具体的協議を行うため、9月7日〜10日の日程で、当センターの新井力専務理事と中村豪総務・企画部部長が北京を訪問しました。
8日は終日、介護学生の育成支援をするNPO日中介護事業交流協会と陝西省工運学院、及び中国職工対外交流中心との協議を行い、11月の再度の協議に向けて、それぞれが課題を整理してくることとなりました。
また、中国職工対外交流中心とは、来年開催される当センター設立30周年関連事業についても協議を進めました。
監査業務の一層の効率化を
2015年度 第1回監査会議開催
9月16日(水)、当センター会議室において、今年の第1回監査会議が開催されました。
各地方の担当者と本部からは人見理事長以下関係役職員、合計24人が出席しました。
人見理事長の当面する幾つかの課題についての挨拶を受け、本部から現在国会で審議されている「外国人の技能実習の適切な実施及び技能実習生の保護に関する法律」についての審議状況等の報告、監査業務を確実に、また効率的に実施するためのポイントについて説明されました。
最後に各地方担当者からの具体的な問題や課題に関する意見交換・情報共有の結果、より質の高い実習事業の推進を目指すことが確認されました。
2015年度第1回監査会議
日中友好促進のため会談
厦門(アモイ)市総工会訪日団当センターを表敬訪問
9月7日(月)中国福建省厦門市総工会訪日団一行5名が当センターを訪れました。
蔡志凱団長から厦門市の経済状況、労働者収入、日系企業の進出状況、学生の就職率などの紹介がされました。
人見理事長からセンターの概況、活動状況の説明がされ、今後日中の働く仲間の友好促進のため協力していくこととしました。
中国福建省厦門市総工会(団長蔡志凱)代表団との記念撮影
派遣教師からのおたより
読み聞かせの授業
石家庄学院 小原 隆俊
日本の有名な作家の作品を読む、読み聞かせの授業を立ち上げました。
明治、大正時代の小説は学生に人気が高く、過去の卒業論文にもたくさん取り上げられています。
これらは、日本の伝統文化を知るものとして有効な教材です。日本語学科の任先生との雑談の中で決まりました。任先生は、若いときに日本の企業で働いたことのある日本語の達人ですが、この先生の意見もあって、学生が自由に参加できる課外授業を組んだのです。私と任先生の二人で担当します。
使用する作品は、川端康成の「雪国」か夏目漱石の作品か迷っていましたが、最初は「坊ちゃん」を使うことにしました。
最初の授業には3、4年生が32人来ました。結構人気があります。まず、私が冒頭に本文を読み、その後、中国語で学生に読んでもらいました。教官室に中国語訳が付いた本が何冊かあったので、それを借りました。
その後、一行ずつ難しい言葉を解説したり、質問を受けたりしました。そして最後にもう一度、私が読みます。途中、夏目漱石の生い立ちやエピソードやその当時の生活の様子などの説明をしました。そして締めくくりに任先生が中国語で詳しく解説します。
日本語は中国語のように抑揚がありませんので、学生は一言一言聞きのがすまいとしているのでしょう。読んでいる私の方に耳を傾けながら、真剣に聞いています。そして、「坊ちゃんは馬鹿な人ですか。」と質問したり、「おもしろい話ですね」と、感想を言ったりします。皆、楽しそうに参加していました。
私にとっても、すばらしい体験です。それは、自由参加にも関わらず大勢の学生が日本のことに興味を示して参加してくれるからです。それに、自分自身が何十年ぶりかで「坊ちゃん」を新鮮な感覚で読み直すことができました。「坊ちゃん」はやはり名作です。読んでいて痛快さが伝わってきます。
また、大きな声で読むので、委縮しがちな海外生活の中で爽快感を味わうことができます。そして何よりも「楽しい日本語の授業を通して、日本の文化を伝える。」という自分の目標に近づけるような気がするからです。
今後、「無鉄砲」や「ひがむ」などの難しい言葉の内容をどのように伝えるか、一層の工夫が必要です。そして最後には、参加している学生みんなと日本の文学について話し合いたいと思っています。
石家荘学院の外国語学科棟
授業の後で(4年生)