中国職工対外交流中心、企業開拓団が来日
実習生受入企業の拡大と優秀な実習生の安定的派遣に向けて
8月27日~31日まで、中国職工対外交流中心の企業開拓団(団長:毛孟輝・技術交流部部長)が来日しました。これは、技能実習生事業について、受け入れ規模の拡大を図ることを目的としたものです。
一行は、運輸労連ほか、四国地域の主な企業10社あまりを訪問し、既存の受入企業の要望を調査するとともに、新規受入企業の紹介など、実習生受け入れ拡大のための活動を行いました。
あわせて、当センターとの業務会談では、日中双方で受入企業の開拓を展開していくことや、優秀な実習生の安定的な派遣などについても、協議を行い、ともに尽力していくことを確認しました。
運輸労連の髙松副委員長、小畑書記長をはじめとした幹部との会談
好評を博した「ビジネスマナー授業」
国家外国専家局の招聘により、10月7日から12日までの日程で、新井力・事務局長/教育交流部統括部長、堤英理子・教育交流部職員、増山ちとせ・日本通運株式会社ビジネスマナー講師が訪中しました。
日本語教師派遣事業に関する協議の他、今回は、ビジネスマナー授業を2校で実施しました。これは、日系企業に就職を希望する学生が、仕事上のマナーを体験的に知るために企画されたものです。授業は、センターから日本語教師を派遣している河北師範大学(河北省)で8日に、また北京第二外国語学院(北京市)では9日に、国家外国専家局の協力のもと行われました。
学生をはじめ学校側関係者にも高評価で、学生からは「就職活動に大変役立ちます」、「またこのような授業に参加したい」等の声があがりました。今後、この授業の経験と学生からのアンケート結果等をもとに、「日系企業就職準備コース(仮称)」の事業化の可能性について、具体的検討を進めていくことになります。
10日午前は、在中華人民共和国日本国大使館を訪問し、午後は、国家外国専家局と2014年9月から施行される『日本語教師の招聘と派遣に関する協議書・覚書』に関する協議等を行いました。11日は中国職工対外交流中心を表敬訪問し、彭勇・秘書長、李暁波・副秘書長ら幹部と会談を行い、12日に全日程を終え帰国しました。
増山ちとせ・日本通運㈱ビジネスマナー講師による授業風景
おじぎの実践練習
受け入れ企業代表者会議、各地で開催
技能実習制度を取り巻く環境の変化
技能実習生受け入れ企業代表者会議(通称:ブロック会議)が、10月9日の東海ブロックを皮切りに始まりました。
今年度は、JITCO、各地域労働局の担当者が、それぞれ、「技能実習制度をめぐる問題点・留意事項」、「技能実習制度における労働基準関係法令の適正運用」をテーマとして講演し、実習生制度を取り巻く環境の変化と問題点について、各受け入れ企業の代表者達を前に報告しました。
東京の当センター本部にて10月18日に開催された関東ブロック会議では、山中政法・JITCO出入国部統括副部長により、実習生数自体は増加傾向にあるが、従来大半を占めていた中国から他の国へシフトしていること、新制度適用以後の法令違反の変化、アメリカや国連において日本の技能実習制度への批判が高まっていることなどが報告されました。続いて講演した、坂本直己・東京労働局労働基準部監督課地方労働契約専門官からは、「技能実習生には労働基準法が適用される」ということに対する認識が受け入れ側に不十分なことから生じる法令違反について、具体例が提示され、法令遵守の徹底を参加者に強く求めました。
また当日は、中国職工対外交流中心から李暁波副秘書長が来賓として出席し、挨拶の中で、中国側が認識している諸問題に言及しました。候補者選抜に影響していると考えられる中国の労働状況の変化については責任を持って調査すると表明するとともに、実習生の日本語能力の進歩や安定した実習生生活を送るために、受け入れ企業側にも中国への理解を深め、相互のコミュニケーションを深めていくことを要請しました。
各地域のブロック会議も同様に開催され、東海ブロック会議では、人力資源社会保障部・国際交流服務中心から候瑞方副処長が来賓として出席し、挨拶をしました。各会場ともに、当センター、受け入れ企業はじめ関係者一同が、実習生事業を円滑に進めていくために必要なことを認識する場となりました。
10月16日開催の中四国ブロック会議
2013年度JITCO日本語作文コンクール入賞者を表彰
おめでとう! 3,773編の応募から当センター受入れ実習生が最優秀賞・優良賞を獲得
公益財団法人国際研修協力機構(JITCO)が93年より、技能実習生・研修生の日本語能力向上のために実施している「日本語作文コンクール」に、当センターの受入実習生2名の作品が、最優秀賞と優良賞に選ばれました。今年は3773編の応募がありました。
当センターでは、実習生受入企業および実習生本人達に対し、このコンクールへの応募を勧奨しています。今年は、33編の応募があり、最優秀賞は、向晓庆さん(㈱エヌビーシー様)が、また優良賞は、李晓雷さん(㈱アイカ様)が受賞しました。
向さんの作品は、「アッサリとした味」と題するもので、日本語の上達には、語感をつかむことが大切である事を、日本の料理を食べた経験をとおして、"アッサリ"という擬態語で表現したものです。また、李さんの作品は「春の物語」と題し、実習期間中に入院した経験をもとに、職場の日本人の上司や実習生仲間に"入院は日本語を勉強する機会だから"と励まされ、親切心に触れた経験を綴っています。
ともに、みずみずしい感性で日本の生活を描き、そして、これからの生活にも大きな期待を抱いていることが伝わるすばらしい作品でした。
当センターでは、10月4日午前、JITCOでの表彰式に先立ち、受賞者と受入企業の関係者を本部へお招きして、受賞者に表彰状と記念品の贈呈を行いました。また、受入企業の関係者各位に感謝を述べるとともに、当センターとして「作文コンクールには、今後も力を入れていくこと」としました
写真左から、朝日正俊(㈱エヌビーシー)、向晓庆、人見理事長、李晓雷、朴美玉(㈱アイカ)の各氏。(敬称略)
最優秀賞「アッサリとした味」
XIANG XIAO QING
国籍:中国 職種:電子機器組立て実習 実施機関:㈱エヌビーシー
私は、日本に来る前に、国で日本語を学びました。「あいうえお」から始まった授業は初歩的な挨拶へ、語彙、文法、作文、読解、聴解と次第に難しくなって行きました。
その中で一番難しかったのは擬態語、擬声語、擬音語です。(日本人の先生はこれらを「オノマトペ」と言うと教えてくれました) 日本に来て十か月ほど経った今でも、オノマトペは苦手です。
なぜ星は「キラキラ」で、太陽は「ギラギラ」と輝き、小川が「サラサラ」で、大河が「ゴウゴウ」と流れると言うのか、私には分かりませんでした。
ある日、日本人の先生が「コロコロ」と「ゴロゴロ」と黒板に書いて「小石が転がる音はどちらかな?」と聞いた時に、私は「コロコロ」と答えました。先生は「ピンポン!正解!良くできましたね」と褒めてくれて、「どうして分かりましたか?」と聞きました。私が「なんとなく、そう思いました」と答えたところ、先生は「そうなんです。それを語感と言います。オノマトペは日本人の語感による表現なので、辞書の説明ではあまり分かりません。日本のオノマトペは何万とありますが、一つ一つ覚えるしかありません。」と言いました。「ヨチヨチ、ノロノロ、スタスタ」歩く、「ワーワー、ギャーギャー、シクシク」泣く、など、など、先生が色々なオノマトペを身振り手振りで説明してくれたので、その違いがだいたい分かるようになりました。
しかし、日本料理の話がでた時に「サッパリとした味」とは、どんな味か全く分かりませんでした。(私の故郷はほぼ全てに唐辛子を使う辛味がベースです。)それが分かったのは、日本の和食レストランで日本人の恩師と食事をした時です。恩師が「これを食べてごらん。これがサッパリとした味です。」と、胡瓜とワカメの酢の物の小鉢を私に勧めてくれたのです。次に、冷やしソーメンを食べた時に「サッパリとした味ですね。」と私が言ったら、「ピンポン!」と恩師は笑いました。
「アッサリ」とした味と言うと白身の刺身にも挑戦してみました。「生の魚」と聞いていたので、そんなにサッパリした味で美味な物が食べられるのか、と不思議に思っていたのですが、お皿にきれいに盛り付けられた刺身はまるでケーキのようでした。おそるおそる口にすると、意外にも「アッサリ、サッパリ」した味で美味しかったです。
毎日の仕事は楽ではありませんが、日本での生活は「百聞は一見に如かず」の毎日で、刺激的で楽しいです。これからも、色々な体験をし、日本料理を楽しみながら、正しく「オノマトペ」を使えるように日本語の力を伸ばしていきたいと思っています。
向さん・日頃の実習風景
優秀賞「春の物語り」
LI XIAO LEI
国籍:中国 職種:印刷実習 実施機関:㈱アイカ最優秀賞
これは私が日本で経験した物語です。
私は昨年の11月に実習生として日本に来ました。もう半年の月日が経ちました。日本に来た時、もちろん何も分かりませんでした。研修センターの先生の助けと教えの下でだんだん慣れてきました。1カ月間の日本語の研修を終え、私達は各工場に配属することになりました。心細い私達を迎えてくれたのは勤務先の後藤課長と朴先生でした。二人ともとても優しくしてくれて、私達も安心しました。その時は日本語が下手ですから、いつも朴先生の通訳で日本人と話をしていました。今は日本語も少し分かるようになったので、会社の人とも朴先生の力を借りなくても話せるようになりました。でも、困った時は「ニイハオ」「シェシェ」などの簡単な挨拶が私と日本人の距離を縮めてくれました。挨拶の大切さを知りました。
仕事は印刷です。会社の方達はとても親切で、毎日楽しく仕事をしていました。私は先輩の実習生一緒に働いているので、仕事にも早く慣ました。
慣れた時に私にとって不測の風雲が来ました。ある日、仕事中に不注意で怪我をしてしまい、手術を受けざるを得なくなりました。会社も長い間休みました。入院している間、後藤課長と朴先生は毎日病院へ来てくれました。私はとても感動しました。大橋工場長は「入院は日本語の勉強をする機会をくれた。頑張りなさい」と言ってくれました。そして、私も入院を機会と思い、毎日ちょっとずつ単語を覚えたり看護士と話したりして日本語を一生懸命勉強しました。怪我をして辛い入院でしたが、いつも親切にしてくれた会社の方々、先輩達、病院の看護士達、みなさんの行き届いた配慮で回復も速くまもなく退院することになりました。日本人の励ましに感動し、感動します。仕事に復帰し、私は前と同じく先輩の実習生と一緒に仕事をしています。毎日自信と情熱を持って取り組んでいます。痛めた傷は見えません。私は大きな怪我をしましたが、強く元気に生きて仕事をする決意を持ちました。それは周りのたくさんの方からいただいた気遣いがあったからです。みんなから勇気をもらい痛みは私を成長させてくれました。
4月の初めに桜の花が咲きました。日本の満開の桜の花を見て、ふっと日本人の先生から教えてもらったあることわざが浮かびました。
「冬来たりなば春遠からじ」、私には厳しい冬がいつまでも続くのではなく、明るい未来が待っていると信じています。春の暖かい太陽の日差しを浴びて、私の心もとても明るくて暖かくなりました。あと残り2年半の実習生活、私の物語はまだまだ続くだろう。
李さん・日頃の実習風
編集・発行 公益財団法人国際研修協力機構,『2013年外国人技能実習生・研修生日本語作文コンクール優秀作品集』2013年10月発行, 12頁及び40頁より許諾を得て転載。
四国支所からのたより
実習生が「おんまく祭り」に参加!!
愛媛県・今治市の企業に配属されている実習生は、毎年地元の「おんまく祭り」に参加しています。四国の夏祭りというと、香川の「高松まつり」、高知の「よさこい」、徳島の「阿波踊り」などが有名で、愛媛県ではこの「おんまく」こそが夏祭りの代表です。「おんまく」とは今治地方の方言で「思いっきり」とか「大袈裟」という意味です。今年は8月3日(土)、4日(日)に開催され、グループで参加できる「踊り隊」に、今治のタオル企業数社の実習生が参加しました。この日のために、熱心に練習に取り組み続けた実習生達は、当日はお揃いの法被(はっぴ)姿で“おんまく”に踊り、満面の笑顔をみせていました。
日本のお祭りを楽しむ実習生
「踊り隊」で練習の成果を発揮
派遣教師からのおたより
赴任して1か月、思うこと
聊城市 聊城大学 森下 昌治
8月27日、関空から韓国インチョン経由で済南に到着。そこから西に車で約1時間、聊城(りゅうじょう)市にある学生数3万人、400メートルトラック4つを有する広大な大学、聊城大学に到着。
感慨にひたる間もなく、到着直後から30日までの間に、各種手続き、歓迎式典、市内観光ツアーがあわただしく行われました。そのスピードと、一流ホテルのような住環境に我々外国人教師に対する受入側の期待の大きさを感じました。
学生の積極的な手伝いもあり、生活必需品や自転車、携帯電話など、ほとんどのものが赴任2日目には整いました。心配していたインターネット接続も、全く支障なく、到着した日の夜には妻とスカイプで話すことができました。30数年前、アフリカで活動中、彼女(当時の)からの手紙を毎日待ちわびていたことを思うと隔世の感がします。
授業は週7コマ14時間と少ないですが、準備に時間がかかる私のスタートにはちょうどいい時間数だと思っています。担当は1年生、2年生の会話、2年生の聴解、3年生の作文、加えて4年生を対象とした中日比較文化論です。テキトを中心に進めつつも多少の工夫を加え、まずは学生が楽しみに出席してもらえる授業を心がけています。学生のレベルはまだ把握できていませんが、「読み・書き」のレベルはかなり高いと感じています。一方、「話す・聞く」は、もう一歩も二歩もといったところでしょうか。これも総合日語が週4コマ、会話や聴解が1コマという時間配分からいたしかたがないかもしれません。本来であれば総合日語の進捗と歩調を合わせ、相乗効果が期待できるような授業を行いたいのですが、そこはやはり学校の方針等の問題もあること、ここしばらくは私の担当科目である会話と聴解の範囲内で工夫していこうと思っています。
赴任して1か月、授業が終わった後の先生や学生との飲ミニュケーション、休日のジョギングで、日本でのサラリーマン時代と、多少酒量が増えた以外は、あまり変わらない生活リズムが保てています。キャンパス内にいる限りにおいては、海外生活であることを意識することがほとんどありません。中国と日本、近いようで遠いといわれる両国の違いに異文化を見て取れない自分の感受性の低さが、少し気になります。やはり大学外に意識して出る必要性を感じています。
最後になりましたが、教員、学生、皆とても親切です。またその気配り、心配りには感心させられるものがあります。政治的には日中関係が複雑な中、前任者が残し繋いでくれた人間関係に感謝の思いでいっぱいです。この財産を食い潰すことなく後任へ引き継いでいくのが、私に課せられた「仕事」だろうと思っています。
授業風景(学生撮影)