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チャイナ・レポート(Web版)

不動産政策の調整(2024年7月1日号掲載)

拓殖大学大学院 客員教授  田中 修

 5月17日、国務院は、住宅購入者への住宅引渡保障、住宅在庫の消化につき、新たな政策を発表した。午前中に住宅引渡確実保障政策全国オンライン会議が開催され、以下の政策が決定された。

① 販売済みで引渡が困難となっている建設中の分譲住宅プロジェクトにつき、継続すべきプロジェクトを「ホワイトリスト」に組み入れ、地方政府・銀行が不動産企業の資金調達と竣工・引渡を全力で支援し、住宅購入者の合法権益を保障する。

② 関係地方政府は、情状を酌量して遊休・既存の住宅用地を回収・購入し、住宅企業の資金難解消を支援する。

③ 分譲住宅の在庫がかなり多い都市では、地方が選定する国有企業が一部の分譲住宅を合理的な価格で購入して、(中低所得者向けの)保障性住宅として用いることができる。

④ 保障性住宅の建設、「都市の中の村」(都市の中の開発が立ち遅れた地域)の改造、「平時・緊急時両用」の公共インフラの建設の「三大プロジェクト」を着実に推進する。

  また同日、人民銀行は金融面で以下の政策を発表した。

① 全国レベルの最初の住宅と2軒目の住宅の商業ベース個人住宅ローン金利の下限廃止
  人民銀行各省レベルの支店は、管轄地域内の各都市の不動産市場の情勢及び現地政府のコントロール要求に基づき、管轄地域内各都市の商業ベース個人住宅ローン金利の下限及び下限水準を設定するか否かを自主的に確定する。
  銀行業金融機関は、各省レベルで確定した金利の下限(下限がある場合)に基づき、自身の機関の経営状況・顧客のリスク状況等の要因を結びつけて、各貸出の具体的金利水準を合理的に確定する。

② 個人住宅ローンの最低頭金比率政策の調整
  分譲住宅をローンで購入する個人・家庭について、最初の住宅の商業ベース個人住宅ローンの最低頭金比率が15%以上に調整し、2軒目の商業ベース個人住宅ローンの最低頭金比率が25%以上に調整する。
  人民銀行各省レベル支店・国家金融監督管理総局各支分機構は、管轄地域各都市の最初・2軒目の住宅の商業ベース個人住宅ローンの最低頭金比率の下限を自主的に確定する。

③ 個人住宅公的積立金貸出金利の引下げ
  2024年5月18日から、個人住宅公的積立金貸出金利を0・25ポイント引き下げ、5年以下と5年を超える最初の個人住宅積立金貸出金利を、それぞれ2・35%、2・85%とし、5年以下と5年を超える2軒目の個人住宅公的積立金貸出金利が、それぞれ2・775%、3・325%以上となるように調整する。

④ 保障性住宅再貸出の創設
  規模は3000億元であり、金利1・75%、期間1年、期間延長は4回まで認め、実施機関は21の全国レベルの銀行である。
  銀行は、自主的な政策決定・リスク自己負担の原則に基づき、地方政府が選定した地方国有企業の未販売分譲住宅の購入と保障性住宅としての使用に対し貸出支援を行う。人民銀行は、貸出元金の60%につき再貸出を実施し、銀行貸出5000億元を牽引する。

 こうして、地方政府による遊休・既存住宅用地の回収・購入、地方国有企業による未販売分譲住宅の購入と保障性住宅としての使用、これに対する金融支援の仕組みが整えられた。
 今回のスキームの特徴は、地方政府が直接住宅在庫を購入するのではなく、地方政府が選定した地方国有企業が自主的に不動産企業と交渉して未販売分譲住宅を購入し、保障性住宅として使用する点にある。国有地使用権譲渡収入が減り、地方財政が現在かなり厳しいことに配慮した措置であろう。また、住宅在庫を保障性住宅に転用することで、新たな住宅の供給増を防ぐこともできる。
 なお、地方政府の隠れ債務をこれ以上増やさないため、当該国有企業及び所属グループは、地方政府の隠れ債務に関係していてはならず、地方政府の融資プラットフォームであってはならないこととされている。
 また住宅引渡保障への金融支援としては、5月16日までに商業銀行が行った「ホワイトリスト」プロジェクトへの貸出金額は9350億元となっている。
 いずれにせよ、政府がようやく住宅在庫の処理に本格的に乗り出したことは、不動産市場にとって1つの朗報といえる。今後、このスキームにより不動産市場の供給過剰状態がどれだけ緩和されるか、また住宅購入者への住宅引渡がどれだけ進捗するのか注目したい。


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