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チャイナ・レポート(Web版)

2024年の経済政策(2024年3月1日号掲載)

拓殖大学大学院経済学研究科  田中 修

 2023年12月11〜12日、党中央・国務院共催による中央経済工作会議が開催され、2024年の経済政策の基本方針が決定された。

 まず経済の現状については、「わが国経済は回復上昇・好転している」としながらも、「有効需要が不足し、一部業種の生産能力が過剰で、社会の将来予想が弱気で、潜在リスクが依然かなり多く、国内大循環に目詰まりが存在し、外部環境の複雑性・峻厳性・不確定性が増大している」とし、これを克服するには、自信・気力を増強しなければならないとする。

 2024年のマクロ政策の基本方針としては、従来の「安定の中で前進を求める」に加えて、「前進により安定を促し、先に新制度を打ち立ててから旧制度を廃止することを堅持しなければならない」とし、安定重視から安定・前進を共に重視する姿勢に転換した。「安定」を強調するだけでは、今の経済の停滞を脱することができないからであろう。

 積極的財政政策は「適度に力を加え、質を高め効果を増さなければならない」とし、科学技術イノベーションと製造業の発展を重点的に支援することとされた。また、財政の健全性維持の観点から、財政の持続可能性を増強しなければならないとしている。

 政府は昨年10月末に国債1兆元の増発を決め、23・24年の2年間で災害復旧・再建と防災・減災・災害救助能力向上に充てることとした。しかし、23年はプロジェクトを立ち上げる時間が少なく、プロジェクト資金のかなりの部分は24年に回ることとなり、当面の財源は十分手当されている。

 穏健な金融政策は「柔軟・適度で、精確・有効でなければならない」とし、社会資金調達規模・マネーサプライを経済成長と物価水準の予期目標と釣り合わせることとされた。重点支援対象は、科学技術イノベーション、グリーン転換、小型・零細企業向けインクルーシブファイナンス、デジタル経済である。

 また、今回は「マクロ政策は方向の一致性を増強しなければならない」とされ、財政・金融・雇用・産業・地域・科学技術・環境保護政策のみならず、経済以外の政策もマクロ政策の方向との一致性を評価することとなった。経済とは直接関係ない、塾やオンラインゲームの規制が、経済にダメージを与えた例があるからであろう。

 また、今回は経済の将来への「自信」「気力」「活力」の強化が強調されており、「経済の宣伝と輿論の誘導を強化し、中国経済光明論(中国経済の見通しは明るい)を鳴り響かせなければならない」と、かなり精神主義色が強くなっている。 重点政策としては、次の9項目が掲げられた。

① 科学技術イノベーションにより、バイオ製造・商業宇宙活動・低空域経済(各種の有人航空機または無人運転航空機による各種低空域飛行活動が中心となり、関連分野に波及し、それを牽引し、融合発展した総合的な経済)等の戦略的新興産業、量子・生命科学等の未来産業等の新たな質の生産力を発展させる。
② デジタル消費・グリーン消費・ヘルスケア消費を発展させ、新エネルギー自動車・電子製品等の大口消費を喚起し、民間資本を新しいタイプのインフラ等の分野の建設に参加させて、内需を拡大する。
③ 民営企業の発展・壮大化を促進する措置を実施し、新たな財政・税制改革を計画する。
④ 通信・医療等のサービス業への市場参入を緩和し、外国籍者の中国でのビジネス・学習・観光の制約を確実に打破する。
⑤ 国有・民営不動産企業の合理的な資金調達需要を平等に満足させ、社会保障的性格をもつ(低所得者向け)住宅の建設、「平時・緊急時両用」の公共インフラ建設、「都市の中の村」(都市の中で発展から取り残された地域)の改造の「3大プロジェクト」を推進する。
⑥ 農村産業の発展・農村建設・農村ガバナンスの水準を高め、食糧等重要な農産品の安定・安全な供給にしっかり取り組む。
⑦ 新しいタイプの都市化と農村の全面振興を結びつけ、都市・農村の融合発展を図り、都市再開発を進め、居住に適し、強靭な、スマート都市を作り上げる。
⑧ グリーン・低炭素のサプライチェーンを作り上げ、新しいタイプのエネルギーシステムを建設し、エネルギー・資源の安全保障能力を高める。
⑨ 大学卒業生・出稼ぎ農民等の重点層の雇用の安定を確保する。出産支援政策体系を整備し、シルバー経済を発展させる。


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