拓殖大学大学院経済学研究科 田中 修
習近平総書記は5月5日午後、第20回党大会で新指導部が発足した後の、第1回党中央財経委員会を開催した。党中央財経委員会は、財政・経済政策の重大方針を決める組織であり、経済政策に対する党中央の集中・統一的な指導を体現したものである。したがって、その委員長には、当然ながら習近平総書記が就任している。
今回の会議の主要なテーマは、①党中央財経委員会の役割、②現代化産業システムの建設加速、③人口の質の高い発展による中国式現代化のサポートである。
まず、会議では習近平総書記が重要講話を行った。彼は各テーマについて、①新たな中央財経委員会は、経済政策の重大方針を制定する役割を引き続きしっかり発揮し、経済政策に対する党中央の集中・統一的指導を一層強化・改善しなければならない、②現代化産業システムは現代化国家の物質・技術的基礎であり、経済発展の注力点を実体経済に置き、社会主義現代化国家実現のために、堅固な物質的サポートを提供しなければならない、③人口の発展は、中華民族の偉大な復興に関わる大事であり、人口の全体的素質を高めることに力を入れ、人口の質の高い発展により中国式現代化をサポートしなければならない、と指示した。
3つのテーマに関する議論のポイントは、次のとおりである。
(1)党中央財経委員会の役割
会議は、「経済建設は党の中心的活動であり、経済政策に対する党の指導を強化することは、党の全面指導強化に欠かせないものである」と、党の指導の重要性を強調する。
そして、「党中央財経委員会は、党中央が経済政策を指導するための重要な制度手配であり、責任は重大で、役割は重要である」とし、新発展理念を完全・正確・全面的に貫徹し、新たな発展の枠組の構築を加速し、質の高い発展の推進に力を入れなければならないとしている。
(2)現代化産業システムの建設
会議は、「実体経済を支えとする現代化産業システムの建設を加速することは、我々が将来の発展と国際競争において戦略的主動権を勝ち取ることに関わるものである」と、現代化産業システム建設の重要性を強調する。
そして、「産業のスマート化・グリーン化・融合化を推進し、完全性・先進性・安全性を備えた現代化産業システムを建設しなければならない」とする。建設にあたっては、①実体経済重視の堅持、②安定の中での前進の堅持、③1次・2次・3次産業の融合発展の堅持、④伝統産業の転換・グレードアップ推進の堅持、⑤開放・協力の堅持、が必要とされる。
また、経済安全保障の観点から、産業の安全擁護を重点中の重点とし、①食糧生産において技術を一層重視し、耕地等の制約をブレークスルーしなければならない、②産業チェーン・サプライチェーンの開放・協力を強化しなければならない、とする。
建設の担い手としては、「制度面から科学技術イノベーションの主体としての企業の地位を確かなものとしなければならない」、「優秀な企業家をこれまで以上に大切にしなければならない」と、企業・企業家の役割を重視している。
(3)人口の質の高い発展
会議は、「現在、わが国の人口の発展には、少子化・高齢化・地域の人口増減の分化という趨勢的特徴が現れている」とし、人口の全体的素質の向上に力を入れ、適度な出産水準と人口規模の維持に努力し、「素質が優良で、総量が充足され、構造が最適化され、分布が合理的な」現代化した人材資源の構築を加速し、人口の質の高い発展により中国式現代化をサポートしなければならないとする。具体的施策は、次のようになる。
人口の素質向上の面では、教育・衛生事業を改革・刷新し、人口の科学・文化の素質、健康の素質、思想・道徳の素質を全面的に高める。
少子化対策の面では、健全な出産支援政策体系を確立し、包摂的な託児サービス体系の発展に力を入れ、家庭の出産・養育・教育の負担を顕著に軽減し、出産に優しい社会の建設を推進し、人口の長期にバランスのとれた発展を促進する。
高齢化対策の面では、基本高齢者介護サービス体系の建設を推進し、シルバー経済の発展に力を入れ、多層レベル・多くの支柱の年金保険システムの発展を加速し、「高齢になったら介護を受けられ、高齢になってもする事があり、高齢になっても楽しみがある」ことの実現に努力する。
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