ジェトロ・アジア経済研究所 上席主任調査研究員 田中 修
2019年12月10〜12日に、党中央・国務院により、20年の経済政策の方針を決める中央経済工作会議が開催された。
経済情勢の認識としては、「経済の下振れ圧力が増大している」と、18年会議の経済下振れ圧力に「直面」から「増大」へと表現が強まった。しかし、その原因として、18年会議は「世界の局面変化」が強調されていたが、今回は、発展方式の転換・経済構造の最適化・成長動力の転換の3つの時期が重なっているためだとし、単に経済周期的問題だけではなく、構造的・体制的問題があることを認めている。
経済政策の基本方針としては、2019年も、「雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想」の安定が重視されていたが、20年はさらに、豚肉価格・地価・住宅価格・債務比率・マクロ政策の安定が盛り込まれており、「安定の維持」が強調されている。
また、「経済の量の合理的な伸びと質の段階的向上の実現を確保しなければならない」と、成長率のみならず質の向上も目標とされている。
2020年の重点政策としては、小康社会の全面実現を図るため、農村の脱貧困の全面達成を確保するとともに、民生とりわけ困窮大衆の基本生活が有効な保障・改善を得ることを確保することに重点が置かれている。雇用政策では「就業ゼロ家庭」の解消が特記された。
不動産政策については、すでに住宅市場の過熱がピークアウトしつつある現状を踏まえて、「地価・住宅価格・予想の安定」に重点が移った。住宅価格の急落は、金融リスクを増大させるおそれがあり、不動産市場のソフトランディングが求められるのである。
積極的財政政策は、「質・効率の向上に力を入れ」と、18年会議の「力を加え」という表現が削除され、むしろ「質・効率の向上」にウエイトがかかった。2019年度は財政赤字の対GDP比を2・6%から2・8%に引き上げたが、さらに引き上げることには異論があるのだろう。
穏健な金融政策は、「柔軟・適度にし」と、「緩和・引締め」という表現が削除され、金融政策の安定が重視されている。
また「資金を誘導して、乗数効果を備えた先進製造・民生建設・インフラの脆弱部分等の分野に振り向けなければならない」と、政策効果のある分野への資金投入が重視されており、ここでも「バラマキはしない」という李克強総理の持論が貫徹されている。
個別政策としては、次の項目を列挙している。
アフリカ豚コレラの影響で、豚肉価格が高騰しているため、養豚業の回復が特記された。また、米中経済摩擦により国際的な産業チェーンの断裂が懸念されるため、「産業の基礎能力・産業チェーンの現代化」「バリューチェーンのハイエンドへの延伸」が強調されている。都市部パイプライン・都市駐車場・コールドチェーン物流は、今後の特別地方債の重点対象プロジェクトである。
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