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チャイナ・レポート(Web版)

不透明さを増す中国経済(2019年7月1日号掲載)

ジェトロ・アジア経済研究所 上席主任調査研究員 田中 修

 中国の1〜3月期のGDPは、実質6・4%の成長となり、2018年10〜12月期と同水準に落ち着いた。
 成長率への寄与率でみると、最終消費は65・1%、資本形成は12・1%、純輸出は22・8%と、純輸出の寄与率が2018年のマイナス8・6%から大きくプラスに転じている。
 1〜3月期の成長率の下げ止まりは、6つの要因が考えられる。①昨年10月と今年1月の個人所得税減税(受益納税者約8400万人)、②今年1月の小型・零細企業認定基準の範囲拡大と優遇税制の強化(受益企業1798万社)、③地方債の大幅前倒し発行による地方インフラ建設の資金確保、④数次にわたる預金準備率引下げにより解放された資金の民営企業、小型・零細企業向けの拡大、⑤米中経済貿易交渉が当初予想より比較的順調に進展していたことにより、企業と市場の期待・自信が高まったこと、⑥4月からの増値税税率引下げが、3月に仕入れ需要の前倒し効果を発生させたこと、である。


 しかし、4月の経済指標を見ると、小売総額は前年同月比7・2%増となり、3月から減速した。
 1〜4月期の都市固定資産投資は前年同期比6・1%増であり、1〜3月期から減速した。内訳をみると、インフラ投資は横ばい、不動産開発投資もほぼ横ばいである。これに対し、民間固定資産投資は5・5%増と、2019年に入り毎月減速傾向にある。
 4月の輸出は前年同月比マイナス2・7%であり、3月の大幅プラスから再びマイナスに転じた。輸入は4・0%増であり、12月から3月までのマイナスからプラスに転じた。
 また、4月の工業生産は前年同月比5・4%増となり、3月から大きく落ち込んだ。4月の工業企業利潤もマイナス3・7%と、3月の大幅プラスからマイナスに転じている。
 他方、雇用の面では、4月の全国都市調査失業率及び31大都市調査失業率は、いずれも5・0%であり、3月より改善した。1〜4月期の新規就業者増は459万人と、年間目標1100万人の約42%に達し、1〜3月期の有効求人倍率は1・28と高水準である。
 今後については、4月に実施された増値税減税の効果が、5月以降次第にプラスの効果が現れ、加えて企業の年金など社会保険料率引下げにより、4〜6月期の経済成長は、1〜3月期より若干減速することがあっても、とりあえずは安定成長を維持する可能性が高い。


 しかしながら、下半期に懸念材料がないわけではない。
 第1に、住宅価格は、3月の全国70大中都市の新築分譲住宅販売価格は前月比2都市が低下(3月は4)し、上昇は67(3月は65)と、いったんおさまりかけた住宅価格が2019年に入り再上昇している。住宅価格の上昇に歯止めがかからなければ、家計部門の債務が増大し、消費を一層抑制する可能性がある。
 第2に、インフラ投資を増やすため、特別地方債の発行額を前年度より8000億元増やし、発行が大幅に前倒しされてきたが、年後半に投資が息切れする可能性がある。
 第3に、全国1人平均可処分所得は6・8%増と成長率を上回ったが、都市の1人平均可処分所得は5・9%と成長率を大きく割り込んでおり、この結果都市の1人平均消費支出は4・1%増と低迷している。消費を安定させるには、都市住民の個人所得の安定した伸びが必要である。
 第4に、民間投資の伸びが継続して鈍化している。今後の投資の柱は、本来民間投資であるべきであり、これ以上伸びを鈍化させない工夫が必要である。
 第5に、順調に見えた米中経済貿易交渉が詰めの段階で難航しており、高関税による報復合戦のリスクが高まっており、今後は、外需による成長率の牽引は余り期待できない。特に米国が残る約3000億ドル分の中国からの輸入品に高関税を課した場合、これには労働集約型製品が多く含まれているため、これまでは順調であった雇用への影響・民間投資のさらなる減速が懸念される。


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