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チャイナ・レポート(Web版)

民営企業の発展支援(2019年1月1日号掲載)

奈良県立大学特任教授 田中 修

 習近平総書記は11月1日、民営企業座談会を開催し、重要講話を発表した。
 まず、習近平総書記は、「40年間、わが国の民営経済は、既にわが国の発展を推進する不可欠のパワー、起業・就業の主要な分野、技術革新の重要な主体、国家の税収の重要な財源となっており、わが国の社会主義市場経済の発展、政府機能の転換、農村の余剰労働力の移転、国際市場の開拓等のために、重要な役割を発揮してきた」と、改革・開放以降の民営経済の役割を強調し、「わが国経済の発展が中国の奇跡を創造できたのは、民営経済の功績があってこそである」と、民営経済を称賛する。
 そして、公有制経済との関係については、「我々が公有制経済をしっかり強固にし、しっかり発展させることを強調するのは、非公有制経済の発展を奨励・支援・誘導することと対立するものではなく、むしろ有機的に統一したものである。公有制経済・非公有制経済は相互に補完して良い成果を生み出すものであり、相互に排斥し、相殺するものではない」と公有制経済と非公有制経済の共生を強調し、「すべての民営企業と民営企業家は、心を落ち着かせ、安心して発展を謀ることができる」とする。
 他方、「最近、いくらかの民営企業が経営発展において、市場・資金調達・転換等の方面で困難・問題に遭遇している」ことを認めたうえで、「民営経済のために不断により好い発展環境を作り上げ、民営経済が発展における困難を解決する手助けをし、民営経済の創造活力を十分奮い立たせなければならない」と、民営企業の発展支援を要請している。
 具体的には、当面、6方面の政策措置を実施するとされている。

①企業の税・費用負担を軽減する
 増値税等の実質的減税を推進する。小型・零細企業、科学技術型パイオニア企業に対しては、恩恵が遍く及ぶ課税免除を実施し、社会保険料の名目保険料率を引き下げる。

②民営企業の資金調達難・資金調達コスト高の問題を解決する
 金融の市場参入を拡大し、民営企業の資金調達ルートを開拓する。経済構造の最適化・グレードアップの方向に合致し、将来性のある民営企業に対しては、必要なファイナンス救援を進める。政府部門・大企業が優勢な地位を利用して、民営企業への支払いを先延ばしする行為を是正する。

③公平な競争環境を作り上げる
 市場参入、審査・許可、経営面、入札等の方面で、民営企業のために公平な競争環境を作り上げる。民営企業が国有企業改革に参加することを奨励する。

④政策の執行方式を整備する
 生産能力削減・脱レバレッジは、各種所有制企業に対して同様の基準で執行し、安全監督・環境保護等の法執行において、単純化・一律執行を回避しなければならない。

⑤親しみがあり清廉な政治・ビジネス関係を構築する
 各レベル党委員会と政府は、常に民営企業の不満・訴えに耳を傾け、とりわけ民営企業が困難・問題に遭遇している情況下においては、より積極的に対応し、率先してサービスを行い、実際の困難の解決を助けなければならない。

⑥企業家の人身・財産の安全を保護する
 紀律検査・監察機関は、合法な人身・財産の権益を保障し、企業の合法な経営を保障しなければならない。

 2016年に民間投資の伸びが急激に減速して以来、指導部の間で内需における民営企業の役割が見直されている。一時期、習近平総書記が、国有企業の強大化を強調したこともあって、習近平指導部は国有企業に傾斜しているのではないか、国有企業改革は後退するのではないか、との観測も見られたが、今回の座談会はこれを一応打ち消した形となっている。
 改革・開放40周年の年に、内外で国有企業への批判が高まるなか、指導部は再び改革強化にカジを切りつつあるようにみえる。

 

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