日中産学官交流機構 特別研究員 田中 修
3月5日、全人代が開催され、李克強総理が政府活動報告(以下「報告」)を行った。このうち、2017年の経済政策関連部分の主要なポイントは以下のとおりである。
1.2017年のマクロ経済の目標
マクロ経済の主要予期目標は以下のとおりである。
⑴GDP成長率目標:6・5%前後(2016年は6・5%~7・0%、実績6・7%)
成長目標を引き下げた理由として報告は、経済の現実(中成長)に符合し、予想の誘導・安定化、構造調整に資するものであり、2020年に10年のGDPを倍増するという目標ともリンクしていると説明している。
16年の成長目標が「6・5%~7・0%」と過大に設定されたため、結果的に年前半はサプライサイド構造改革もその他の抜本改革も停滞した。今回の変更は、その反省の意味があろう。
⑵消費者物価上昇率:3%前後(2016年は3%前後、実績は2%)
国家発展・改革委員会が行った経済報告は、工業製品出荷価格(PPI)の上昇が川下産業・末端消費に転嫁され、輸入商品価格の波及と国際大口取引商品価格の上昇傾向の影響により、新たなインフレ要因が形成される可能性があるとする。これが金融政策のあり方にも影響を与えている。
⑶雇用目標
①都市新規就業者増:1100万人以上(2016年は1000万人以上、実績は1314万人)
②都市登録失業率:4・5%以内(2016年は4・5%以内、実績は4・02%)
報告は、「都市新規就業者増の予期目標を昨年より100万人多くし、雇用をより重視するという方向性を際立たせた。経済のファンダメンタルズと雇用吸収能力からすれば、この目標は努力を通じて実現できる」と説明している。
2.マクロ経済政策
⑴財政政策: より積極・有効でなければならない
2016年度よりも役割がさらに強まった。これは、金融政策が緩和気味から景気中立型に転換したことが背景にあろう。
2017年度の財政赤字は2・38兆元を計上(前年度比2000億元増)し、財政赤字の対GDP比率は昨年度と同様3・0%とした。
2016年度は、収入に予算安定調節基金、中央政府基金(特別会計)予算、中央管轄国有企業予算、前年度繰越・剰余資金を繰り入れることにより、最終的に3・0%におさめており、2017年度も同様な操作を行って、3・0%におさめるものと思われる。
⑵金融政策:穏健・中立的でなければならない
2016年の緩和気味の運営から景気中立型へ明確に変化した。これはPPIの急上昇・不動産バブルのリスクが背景にあろう。
2017年のM2と社会資金調達規模残高の伸びは12%前後としており、いずれも16年の目標13%前後より引き締まっている。
3.サプライサイド構造改革
習近平総書記が強調する5大任務は、次のように定められた。
⑴過剰生産能力の削減
2017年はさらに生産能力を鉄鋼5000万トン前後、石炭1・5億トン以上、火力発電5000万キロワット以上を圧縮・削減しなければならないとし、新たに火力発電の目標が盛り込まれた。
また、「ゾンビ企業」を有効に処置し、企業の合併・再編、破産・清算を推進し、従業員をうまく再就職させなければならないとしている。
⑵住宅在庫の削減
不動産在庫が依然としてかなり多い三線・四線都市の在庫解消を重点的に進めるとともに、住宅価格の上昇圧力が大きい都市は住宅用地を合理的に増やし、価格の速すぎる上昇に歯止めをかけなければならないとしている。
⑶脱レバレッジ
非金融国有企業のかなり高いレバレッジ率を引き下げることを、最重点としなければならないとしている。
⑷企業コストの引下げ
税負担引下げについては、中小企業に重点が置かれている。
税以外の負担軽減については、「年金・医療・失業・労災・出産保険と住宅積立金」の保険料率、行政サービス手数料、エネルギー使用・物流等のコスト引下げが掲げられている。
⑸脆弱部分の補強
報告は、貧困は最大の脆弱部分であるとし、農村貧困人口を16年の1240万人に続いて、さらに1000万人以上減らすとしている。
|目次に戻る|