日中産学官交流機構 特別研究員 田中 修
12月14〜16日、党中央・国務院共催による中央経済工作会議が開催され、2017年の経済政策の基本方針が決定された。今回の会議の主な留意点は、以下のとおりである。
1.「安定」の強調
第19回党大会では、政治局常務委員のメンバーが大幅に入れ替わるものとみられる。中国では、しばしば党大会のような大きな政治イベントがあるときは、安定が重視される。
会議は、「2017年は、第13次5ヵ年計画実施の重要な1年であり、サプライサイド構造改革を深化させる年である」と位置付けるとともに、安定の重要性について、「2017年に、安定の中で前進を求める、という政策の総基調をしっかり貫徹することは、特別重要な意義を備えている。安定は主たる基調であり、安定は大局であり、安定の前提の下で、カギとなる分野である程度(改革の)進展をみなければならない」と強調している。
2.財政政策
「財政政策はより積極・有効でなければならず、予算計上は、サプライサイド構造改革を推進し、企業の税・費用負担を引き下げ、民生の保障を徹底するという需要に適応しなければならない」とされた。
サプライサイド構造改革には、企業のコスト引下げが含まれる。2016年5月にはサービス業に対する5000億元規模の減税が実施された。2017年に、さらに追加減税が実施されるのか注目される。また、企業のコストには医療・年金等の社会保険料負担も含まれており、この引下げも課題となろう。
さらに、社会の調和・安定を特に重視する2017年は、社会保障・教育など民生関係の予算の充実も課題となる。この方面の支出は拡大することになろう。
2016年度予算は、財政赤字の対GDP比率を15年度の2・4%から一気に3%に引き上げた。しかし財政部が1月に発表した2016年度の実際の財政赤字額は、GDP比で単純計算すると、3・8%にまで一気に上昇している。17年度にこの比率をさらに引き上げるかどうかは、財政規律との関係で3月の全人代まで議論が続くことになろう。
3.金融政策
「金融政策は穏健・中立性を維持し、マネーのバルブをうまく調節し、流動性の基本的安定を維持しなければならない」とされた。
2016年までの金融政策は「穏健・柔軟・適度」であり、その具体的中身は景気下支えのためのやや緩和気味の運営であった。しかし、2017年は金融政策の「中立性」が強調されている。これは、金融緩和に傾斜し過ぎると住宅市場が再び過熱し、バブル的傾向を示す危険があるからであろう。
工業製品出荷価格(PPI)の急回復・上昇が続くなか、人民銀行はインフレ懸念を表明しており、金融政策は実質的に変更されたとみてよい。この意味で、2017年は金融政策よりも、財政政策の景気下支えの役割が、一層要求されることになると思われる。
4.不動産市場の平穏・健全な発展
住宅在庫の削減については、第三線・第四線の地方都市の在庫は依然深刻である。このため、これらの都市の不動産在庫過剰問題を重点的に解決するとしている。
大都市では資産バブルが懸念されるが、会議は「『住宅は住むためのものであって、投機のためのものではない』という位置付けを堅持し、金融・土地・財政・税制・投資・立法等の手段を総合的に運用して、不動産バブルを抑制するのみならず、乱高下の出現をも防止しなければならない」とする。
具体的には、マクロ政策面ではマネーをしっかり管理し、ミクロの貸出政策では自ら住むための合理的な住宅購入を支援し、貸出が投資・投機的な住宅購入に流れることを厳格に制限しなければならない、としている。
また、住宅購入には実需もあるため、不足する住宅については供給を増やすとともに、大都市に人口が過度に集中することを防ごうとしている。
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