日中産学官交流機構 特別研究員 田中 修
国務院は、サプライサイド構造改革の5大任務の1つである企業のコスト引下げについて、8月末に「実体経済に係る企業コスト引下げに関する政策方案」を決定し、公表した。これらの第一次政策については2017年3月までに実施状況と効果の評価を行うこととしている。全体は膨大であるので、ここでは財政・税制・金融に関わる部分を中心にポイントを紹介する。
(1)企業の税負担の引下げ
営業税を増値税に改めるテストの範囲を建築業・不動産産業・金融業・生活関連サービス業に拡大し、全ての企業が新たに増やした不動産を増値税の税額控除範囲に組み入れる。
(2)企業の資金調達コストの引下げ
銀行が小型・零細企業、「三農」等の脆弱部分と重点分野への貸出支援を強化するよう誘導する。「貸出資金の預金への転化」「預金と貸出のリンク」等の形を変えた金利引上げ行為や銀行の不規範な手数料徴収行為を禁止する。
条件の整った地方が政府保証基金を設立することを認める。銀行が、小型・零細企業への貸出リスクの容認度を高めるよう要求する。不良債権譲渡の効率・柔軟性を高める。発展の潜在力がある企業間の債権の株式転換を支援する。民営銀行が業務を積極的に展開するよう誘導する。
証券取引所の株式による資金調達機能を整備し、債券発行の規模を合理的に拡大し、直接金融の比率を高める。与信状況が良好で、債務償還能力が強い企業が国外で人民元・外貨建債券を発行することを奨励する。
(3)企業の人的コストの引下げ
2016年5月1日から、企業従業員基本年金保険の単位当り保険料徴収率が20%を超えている省については、単位当り保険料徴収率を20%に引き下げる。単位当り保険料徴収率が20%で、2015年末の企業従業員基本年金保険基金の累計残高が支払可能月数で9ヵ月を越えている省については、段階的に単位当り保険料徴収率を19%に引き下げてよい。失業保険の総保険料率を段階的に1〜1・5%に引き下げ、うち個人の保険料率は0・5%を超えないものとする。
住宅公的積立金の徴収比率が12%より高いものは、一律に規範化・調整し、12%を越えてはならない。2016年5月1日から2年内、各省(区・市)は、住宅積立金の徴収率を段階的・適切に引き下げる。
各地方が最低賃金基準の調整幅と調整頻度を合理的に確定するよう指導する。
(4)企業のエネルギー・土地使用コストの引下げ
電力・石油・天然ガス等の分野の市場化改革を早急に推進する。輸送・配送の電力価格改革テストを早急に実施する。
工業企業の土地使用コストを引き下げる。物流業の用地供給を保障し、物流用地の容積率を科学的・合理的に確定する。
(5)企業の物流コストの引下げ
道路料金徴収基準を科学的・合理的に確定し、飛行場・鉄道・港湾の手数料徴収項目を規範化し、不合理な手数料徴収を整理する。
(6)体制メカニズムの改革
行政の簡素化・権限の委譲、開放と管理の結合、サービスの最適化の改革を一層推進し、国有企業改革と企業の合併再編を積極かつ穏当に推進し、財政・税制、金融等の分野の体制メカニズム改革を秩序立てて推進し、供給コストを引き下げ、供給効率を高め、企業のコスト引下げと健全な発展に資する制度環境を形成する。
(7)実施体制
関係部門・地方政府は、自分の分野・地域の実体経済に係る企業のコスト引下げ政策の第一の責任主体であり、この方案に基づいて、実施細則を早急に制定しなければならない。
各部門・各地方は、
①2017年3月末までに第一次政策の実施情況と効果の評価を行い、効果が良好な政策・方法を積極的に普及し、出現した問題を検討・解決し、政策を相応に遅滞なく調整しなければならない。
②2017年から、毎年年内に第一次政策の実施情況を報告しなければならない。
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